2024年8月5日(月)
主張
24年版「防衛白書」
安保政策の大変質があらわだ
防衛省が2024年版「防衛白書」を公表しました。1970年に中曽根康弘防衛庁長官の下で発刊され、76年の2回目からは毎年刊行されてきました。自衛隊創設70年となる24年版は50回目です。初版と比べると、岸田文雄政権の下での安全保障政策の大変質ぶりがあらわです。
■砲艦外交を主張
まず、安保政策上の外交の位置付けです。
初版は「国の安全保障上、まず考えなければならないことは、いかにしてわが国に対する外国の脅威や侵略を未然に防止するかということである。このため、まず、たいせつなことは、国の外交的努力である」とし、具体的な取り組みとして「積極的平和外交、国際連合の強化、軍縮や軍備管理」を挙げています。
これに対し、24年版は「優先されるべきは、積極的な外交の展開」としつつ、「日米同盟を基軸とし、同志国との連携、多国間協力を推進していくことが不可欠」としています。外交でも最重要視しているのは日米同盟です。
その上で「外交には、裏付けとなる防衛力が必要」だとし、「反撃能力の保有を含む防衛力の抜本的強化などを進めていく」と強調しています。岸田政権が決めた敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有などによって相手国を脅す「砲艦外交」にほかなりません。
初版にこうした発想はありません。しかも、「防衛力」の「憲法上の限界」として「他国に侵略的な脅威を与えるようなもの、たとえば、B52のような長距離爆撃機、攻撃型航空母艦、ICBM(大陸間弾道ミサイル)等は保持することはできない」としています。
重要なのは、他国に侵略的脅威を与えるような兵器は憲法上持てないとしていることです。岸田政権が敵基地攻撃能力として導入を進めている長距離ミサイルやそれを搭載する戦闘機や艦船が、そうした兵器に当たるのは明らかです。
24年版は反撃能力のQ&Aを掲載し、日本が武力攻撃を受けていないのに米国の戦争に加わる集団的自衛権の行使として敵基地攻撃能力を使うことも否定していません。集団的自衛権の行使を違憲としていた時代の初版には当然、そうした記述はなく、自衛隊の出動は「わが国に対する侵略があった場合」だけです。
■軍事費を2倍化
軍事費の考え方もまったく違います。
初版は「社会保障、教育その他の諸施策との間に、適切な調和を保ちつつ、効率的な防衛力を漸進的に整備する」とし、「経済力の増大に比例し、国民総生産や国家予算との比率によりきめることは、必ずしも適切でない」としています。
一方、24年版は、NATO(北大西洋条約機構)加盟国などが「経済力に応じた相応の国防費を支出する姿勢を示しており、わが国としても、…防衛力の強化を図るうえで、GDP(国内総生産)比で見ることは指標として一定の意味がある」とし、27年度の軍事費をGDPの2%(11兆円)にするとしています。22年度に比べ、2倍に膨れ上がります。
平和と憲法を壊し、暮らしを押しつぶす岸田政権の大軍拡計画をストップさせることが必要です。