2024年8月2日(金)
きょうの潮流
家の裏が竹林のせいか、ときに蚊に悩まされます。夜中、電灯を消して眠り始めようとすると、蚊のしつこい羽音で安眠できません。こらえ切れず仕留めようと明かりをつけると、蚊はどこへやら。逃げ足が速い▼夏目漱石の俳句に「叩(たた)かれて昼の蚊を吐く木魚哉(かな)」があります。暗所にいた蚊が木魚の音に驚いて飛び出すさまがなんとも滑稽です▼歳時記をめくると、四季を通して昆虫の俳句が紹介されています。多いのは夏や秋で、蚊は夏の季語。ではどんな昆虫がよく詠まれているのか。米ペンシルベニア州立大学の研究者が、1549~2022年の間に世界で詠まれた約4000の節足動物の俳句を分析した論文を発表しています▼よく詠まれた昆虫の上位にランクされたのは蝶(ちょう)、蛍、そしてコオロギなどの鳴く虫でした。一方、言及が少ないのがカワゲラなど水生の節足動物だということです▼人間に最も感動と畏怖の念を抱かせる昆虫と、そうでない昆虫に光を当てた研究だと研究者はいいます。また、言及が少ない生きものは一般社会での知識の断絶を表していると指摘します▼ところで、論文が対象にしたのは英語で書かれたか英訳された俳句です。俳句は世界中で愛されているからです。著者によると、今回の研究は世界中で昆虫が減少しているという報告に触発されたからと語っています。地球上で学名が付けられた生物の種は約190万種で、その半数が昆虫。昆虫の減少が俳句に詠まれる日も来るということなのでしょうか。