2024年7月30日(火)
きょうの潮流
「デジタルファースト」という言葉を耳にするようになりました▼昨今「○○ファースト」ばやりですが、一般的に○○には「市民」のような人間か、「日本」「アメリカ」のように国や地域の名前を入れます。以前は「レディーファースト」が多用されていましたが、最近はあまり耳にしなくなりました▼2019年12月に施行されたデジタル手続き法。行政手続きの処理をデジタル優先にし、オンラインで完結させる目的の法律で、通称「デジタルファースト法」と呼ばれます。人間よりデジタル優先。デジタル技術を使えない人が取り残されるうえ、国が一律に「デジタル化」を“最優先”にゴリ押しするからやっかいです▼国がこんな姿勢ですから、地方自治体の行政計画にも、たびたび「デジタルファースト」が登場します。住民が主役の自治体で、そこに住む人々や役所で働く職員を差し置いて、デジタル第一とは優先順位を間違っています▼取得が任意であるはずのマイナンバーカードの普及率が高い自治体に補助率の高い交付金が配分されたり、自治体の都合も考えずITシステムの共通化を強制する。ひとえに政府の「デジタルファースト」の弊害です▼横浜市で開かれた第66回自治体学校で中山徹奈良女子大学名誉教授は、「戦争できる国づくり」のもと地方自治が後退している現状を示し、「自治体は国の下請けではない」と新しい地方政治への転換を呼びかけました。自治体は国の悪政の防波堤。これぞ自治体ファーストです。