2024年7月28日(日)
主張
最低賃金の目安
政治の責任で1500円早く
厚労省の国民生活基礎調査で「生活が苦しい」が過去最悪の6割となり、物価を上回る賃上げが切実に求められるのに、この金額ではまったく不十分です。
中央最低賃金審議会が答申(25日)した2024年度の最低賃金額(最賃)引き上げの目安です。全国加重平均で50円(5%)増の1054円としました。「過去最大」の上げ幅と言われますが、広範な労働者が求める全国一律1500円とはかけ離れています。
各地の食料支援の現場では、仕事があっても、困窮と生活不安から食料を求める人が増えています。実質賃金は過去最悪の26カ月連続マイナスです。いまこそ最賃の大幅引き上げで賃金の底上げを図るときです。
最賃の大幅アップは全世代の切実な要求です。厚労省の調査では、25歳以下の若年層と60歳以上の高齢者層では最賃に近い労働者(最賃の1・1倍未満)の割合が2割を超えています。非正規をはじめ最賃ぎりぎりで働く労働者、高学費のため長時間アルバイトをする学生、年金だけでは生活できずパートで働く高齢者、男女賃金格差の是正にとっても、最賃の大幅引き上げが求められます。
■残る地域間の格差
地域格差の是正も大問題です。地域ごとのA~Cランクいずれも50円の引き上げで、目安通りの引き上げなら最も高い東京都が1163円、最も低い岩手県で943円と格差はそのままです。全労連の生計費調査では都市と地方の生計費の格差はありません。
「最賃の目安」は、全国一律制度を求める世論に追いつめられ、一律制度の代わりに「地域格差を縮小する」と言って導入されました。しかし、格差は拡大したままです。全国一律制度に踏み切るべきです。
世界各国は最賃を大幅に引き上げています。物価水準を考慮した購買力平価でみて、日本の最賃は経済協力開発機構(OECD)諸国で最低水準です。
岸田文雄政権は、30年代半ばまでに最賃1500円を目指すとしますが、遅すぎます。「骨太方針」で「あらゆる政策を動員して賃上げを後押し」「地域間格差の是正を図る」としながら、実際には何の手も打っていません。
■中小企業の支援を
最賃引き上げのためには政治の責任で、日本の企業の99・7%、労働者の7割が働く中小企業を支援することが不可欠です。日本共産党は、大企業がこの10年間で増やした180兆円近くに上る内部留保に対して5年間、2%の時限的課税を行い、中小企業の賃上げ支援を行うことを求めています。価格転嫁に応じず、中小企業の経営を圧迫し賃上げの足かせとなっている発注元の大企業をただすことも重要です。
一刻も早く最賃時給1500円、月額で手取り20万円へ引き上げ全国一律最賃制を確立する必要があります。今後、都道府県ごとの地方審議会で目安を参考に実際の改定額が決定されます。目安への上乗せのカギは労働者の闘いです。
日本共産党は賃上げに無策な政治を転換し、労働者・労働組合と連帯して「8時間働けば普通に暮らせる社会」「自由な時間の拡大」を実現し、暮らしに希望を開くために奮闘します。