2024年7月27日(土)
一人ひとりの命を思い
やまゆり園事件8年 追悼式 献花途切れず
|
19人の障害のある利用者が殺害され職員を含む26人が重傷を負った、障害者入所施設「津久井やまゆり園」での事件から8年となった26日、相模原市にある同園で追悼式が開かれました。花を手向ける人が途切れることなく訪れ、献花台は花であふれました。
毎年この日に同園を献花のため訪れている東京都中野区のAさん(31)は、事件の翌日に現場に来たといいます。Aさんは脳性まひで車いす生活。「足は動かないけれど上半身は動かせます。夜寝ているときは急には動けないから、あの場にいたら逃げ出せなかった」と振り返ります。
この8年、あまり社会は変わっていない、といいます。「国のお金が医療や福祉にまわっていないし、人の意識も変わってないと感じる。目先のことだけになっている」と指摘します。
「一人ひとりの命に向き合いたい思いで手を合わせた」と話すのは、Bさん(64)=神奈川県大和市=です。犠牲者数と同じ19本のヒマワリの花を、名前を公表されている犠牲者の名前をつぶやきながら一輪ずつ手向けていました。娘には知的障害があり、自身は障害者施設に勤めていました。事件発生から3年ほどは、同園近くを通ると「背中がゾワゾワ」し、訪れることができませんでした。それ以降は月命日も含め、できるだけ花を手向けに訪れています。
グループホームなど障害のある人の暮らしの場などで、不祥事や事件が絶えません。「なかなか変わらない社会にむなしくなるけど、誰もが安心して住める社会になってほしい」
「差別的な社会いまも」
Cさん(70)=東京都杉並区=は前日に事件に関する報道を見て、約3年ぶりに訪れました。知的障害のある長男は10年前の夏に亡くなりました。「誰もが寿命をまっとうしたいはず。まだ生きることができたのに人生を断ち切られた人たちは無念だったと思う」と声を詰まらせながら話します。「経済第一主義ではなく、社会福祉にお金がまわる社会になれば、障害者にかかわる人たちの意識も変わるはず」
人ごとじゃない
漫画家のDさん(34)は、3年前からこの日に献花しにくるようになったといいます。「私は吃音(きつおん)があって、事件発生を聞いた時、衝撃を受けました。あの場にいたら、(犯人から名前を聞かれたら)私はうまく答えられないのではないか。人ごとではないと思った」と話します。あまりの衝撃に現場に足を運ぶことができず、園の建物が改修されたのをきっかけに、献花にくるようになったといいます。「みんなが、生きやすい生き方ができるような社会にしたい」
漫画の題材に障害をとりあげ、理解を広めることもしています。「衝撃的な事件だったにもかかわらず、差別的な社会はあまりよくなっていないのではないか。私自身、吃音があることを周りになかなか言えない。もっといろんなことを言いやすい社会になってほしいし、そのためにできることをしていきたい」
「自分も」と恐怖
足と言語に障害があるEさん(50)は、事件が起きたときは胸を手でたたきながら「驚いた」と表現します。「自分も被害にあうんじゃないか」と恐怖を感じたといいます。「昔から、知的障害のある人が地域で暮らすことが難しいし、今も変わらない」と話します。「もっと地域社会のなかでみんながともに暮らせるようになってほしい」