2024年7月19日(金)
主張
自衛隊の不祥事
軍拡と軌を一 徹底した究明を
武力を行使できる自衛隊という軍事組織が法や規律を守らないのは、戦前の軍の暴走さえ思い起こさせる、重大な事態です。
防衛省は、「特定秘密」の漏えいや海上自衛隊の手当不正受給などの不祥事を受け、海自トップの酒井良海上幕僚長を事実上更迭したのをはじめ、計218人という過去最大規模の処分を発表しました(12日)。事務方トップの増田和夫事務次官、制服組トップの吉田圭秀統合幕僚長ら防衛省・自衛隊各組織の最高幹部も訓戒処分を受けました。各組織のトップが一斉処分されるのも前代未聞です。
なぜ、こうした事態が生まれたのか、徹底した究明が必要です。
■税金かすめ取り
処分の対象になったのは▽秘密保護法に基づいて指定された特定秘密の漏えいなど(約120人)▽海自の潜水手当の不正受給(約80人)▽海自基地内での不正飲食(約20人)▽防衛省内部部局幹部によるパワハラ(3人)―です。
特定秘密をめぐっては、58件の漏えいなどを認定しました。秘密を漏らす恐れがないかどうかを調べる「適性評価」を受けていない隊員を、特定秘密を知り得る状態に置いたり(同法上の漏えいに該当)、実際に取り扱わせたりしていました。
背景として、慢性的な隊員不足や特定秘密の指定の在り方、プライバシーを広範に調査する適性評価の問題などが指摘されています。2013年に当時の安倍晋三政権が強行した秘密保護法の必要性そのものを問い直すべきです。
海自の潜水手当不正受給は、2隻の潜水艦救難艦に所属する潜水士の大半が、深海に潜る「飽和潜水」訓練の手当を、記録の残る17年からの6年間で総額4300万円も水増し請求し、受け取っていたというものです。
不正飲食は、海自基地内の食堂で食事の無料支給対象者でないのに、代金を払わず飲食していた事実上の無銭飲食です。
手当の不正受給や無銭飲食に加え、海自と川崎重工業との潜水艦修理契約をめぐり、川重が架空取引で捻出した裏金で海自隊員が金品や飲食の提供を受けていた疑惑も持ち上がっています。裏金づくりは6年前に始まり、総額は少なくとも十数億円に上るとされています。これらは、国民の税金をかすめ取る犯罪行為に他なりません。
ハラスメントも深刻です。背広組中心の内部部局でのパワハラによる懲戒処分は初めてとされます。元隊員が在職中の性暴力被害を告発したことをきっかけに自衛隊内のパワハラやセクハラのまん延が大きな問題になっています。根絶の取り組みが急務です。
■メディアも指摘
これら一連の不祥事は、12年に発足した第2次安倍政権から現在の岸田文雄政権に至る異常な大軍拡と軌を一にしています。メディアも「予算や権限、防衛装備が急激に膨張し、組織に緩みやほころび、驕(おご)りが生じているのではないか」と指摘しています(「東京」社説13日付)。
衆参両院で岸田首相が出席する予算委員会を開き、事実関係を解明し、その原因と責任を明確にすることが不可欠です。