2024年7月14日(日)
きょうの潮流
パリ中心部の共和国広場に集まった人々から地鳴りのような歓声が湧きおこりました。7日午後8時すぎ、フランスの国民議会選挙の開票速報を伝えるテレビが、野党の左翼連合「新人民戦線」が最大勢力になると報じた瞬間です。信じられないと涙をぬぐう人、見知らぬ人同士が抱き合う姿も▼事前の世論調査では人種差別と国民分断を進める極右政党の国民連合(RN)がトップ。わずか1カ月前に結成された「フランス版野党共闘」が逆転勝利するとは予想できませんでした▼6月9日の欧州議会選挙でRNが躍進し、与党が大敗。マクロン大統領はパリ五輪前にもかかわらず突如国民議会解散に打って出ました。極右内閣誕生の危機に対し「民主主義を守れ」と立ち上がったのは、労組や市民、大学生・高校生の団体でした▼これまでの共闘の積み上げもあって、左派や環境派の4党が翌日には共闘組織立ち上げで合意。共通政策では、マクロン政権の新自由主義的、抑圧的政策との決別、最低賃金の引き上げ、あらゆる人種差別とのたたかいを公約。「希望はここにある!」と呼びかけました▼本紙の外信記者は、集会やビラ配りなど市民の自発的な運動が広がったと伝えています。決選投票では新人民戦線とマクロン与党が候補者を一本化して、RNを第3位の勢力に抑え込みました▼国民の審判は、傲慢(ごうまん)な国民無視を続けたマクロン大統領にも下されました。今後、希望を託された新内閣が実現するのか。草の根の力がカギを握っています。