2024年7月12日(金)
主張
トヨタ系へ公取勧告
下請けいじめの構造を改めよ
自動車産業で、またもや悪質な下請けいじめが発覚しました。
トヨタ自動車が90・5%の株式を持つ「トヨタカスタマイジング&ディベロップメント」は、自動車部品の製造に使用する金型を下請け事業者に無償で保管させたなどとして、公正取引委員会から5日に再発防止などの勧告を受けました。
2018年4月設立の同社は、国内外向けの救急車などの特装車両の製造、販売、モータースポーツ車両の企画・開発などを行っています。下請け事業者との取引では、同社が販売、製造を請け負う自動車につける外内装の部品の製造を委託していました。
■成り立たぬ言い訳
公取委によると、同社は2022年7月から24年3月の間、納品時に品質検査をしていないにもかかわらず、納入した部品が不良品だったとして65業者に総額5427万円を返品していました。下請法は、下請け事業者に責任がないのに発注した物品などを返品することを禁止しています。
また、遅くとも22年7月以降、金型を用いた製品を長期間発注していないにもかかわらず、車のバンパーの金型など合計664個を下請け事業者49社に無償で保管させていました。下請法は、発注元に所有権がある金型などの長期保管について、発注元が費用を負担すると定めています。
同社は保管費用を払っていなかったことについて「保管費用は部品の単価に含まれていると誤った認識」をしていたといいますが、そんな言い訳は通用しません。
金型を長期にわたり無償で保管させることは、かねてから問題になってきたからです。中小企業庁・公正取引委員会の「2018年度金型に係る取引の調査」は、量産終了後の金型の長期間の保管を受注側企業が強いられる傾向を指摘しています。
■大もうけを中小に
犠牲を強いられる下請け事業者と対極に、トヨタカスタマイジングの親会社のトヨタ自動車は営業利益で日本初となる5兆円を超える過去最高の大もうけをし、豊田章男会長は役員報酬を前年より6億円増の16億2200万円も受け取っています。
トヨタ自動車はグループ全体でコストカット経営を推し進めてきました。系列の子会社であるトヨタカスタマイジングの西脇憲三社長はトヨタ自動車出身です。コストカットによる利益最優先で下請けに負担を押し付けていたのではないか、グループの体質が問われます。
下請けいじめは、自動車産業に典型的な重層的下請け構造に問題があります。この間、日産自動車も下請けへの減額強要で勧告を受けています。
前出の調査では、金型の保管・管理費用について90%近くが「受注側企業が負担」と回答しています。今回の公取委の勧告は氷山の一角にすぎません。
こうしたことを続けていては、大企業のもうけが中小に回らず日本経済全体は停滞したままです。国は、立ち入り検査の強い権限がある専任の下請け検査官の増員が必要です。トヨタは過酷なコストカットの押し付けを改め下請けいじめの構造をなくすべきです。