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2024年7月5日(金)

主張

強制不妊最高裁判決

国の広げた優生思想の一掃を

 「国による戦後最悪の人権侵害」と指摘される旧優生保護法(1948~96年)により不妊手術を強要された被害者が国に謝罪と損害賠償を求めた五つの訴訟について最高裁大法廷は3日、統一判断を示し、原告勝訴の判決を出しました。

 同法は「不良な子孫の出生を防止する」ことを目的に、説明もないまま、あるいはだまして障害者に不妊手術を強制しました。

 障害者を劣った存在として根絶やしにしてかまわないとする優生思想を学校教育を通じて広げ、地方自治体に手術件数を競わせて推進しました。障害のない人まで対象とされていき、被害者は2万5千人にのぼります。

■除斥期間適用せず

 裁判で国は、手術から20年たつと賠償請求権が消滅するという「除斥期間」の適用を主張し、一、二審では除斥期間の適用について判断が分かれていました。

 これに対し最高裁は、被害者の訴えが除斥期間を過ぎていたからといって「国が損害賠償責任を免れることは、著しく正義・公平の理念に反し、到底容認できない」と批判し、国が除斥期間を主張することは「信義則に反し、権利の乱用として許されない」と国に賠償を命じました。

 また、旧優生保護法と手術は憲法13条(個人の尊厳と人格の尊重)、14条(差別の禁止)に違反すると明確に判断しました。国会議員の立法行為は違法だったとして国の賠償責任を認めました。

 被害者は高齢化しています。国は最高裁判決を真摯(しんし)に受け止め、すみやかに被害全体の調査を行い、すべての被害者に謝罪し、重大な損害に見合う救済措置を講じるべきです。

■差別解消する責任

 最高裁判決は、被害者に損害賠償請求権の行使を期待するのは「極めて困難だった」と指摘しました。それは国が、旧優生保護法を通じて社会に障害者を差別する優生思想を広げ、被害者が訴えられない状況をつくったからです。2万5千人の被害者のうち、わずかに39人しか裁判を起こせなかったことが差別の苛烈さを示しています。

 1人の被害者が訴え続け、原告らが困難のなか勇気をもって声をあげ、支援の輪を広げながら裁判を闘ってきたことが、救済への道を開きました。

 国には深刻な差別を解消する責任があります。

 日本国憲法のもとで優生保護法を議員立法で成立させ、48年もの長期にわたって存続させた国会の責任も重大です。1996年に手術強制の条文を削除して母体保護法に改定しましたが、国会はいまだに過ちを認めていません。立法過程を検証し、明確な総括をすることが必要です。

 日本共産党は2018年に「国会の不作為は共産党にも責任の一端がある」と謝罪を表明。同法成立とその後の同法改定に賛成したことを「重大な誤り」と総括しました。被害者におわびするとともに、今後も、被害者ら全員への賠償を求め、障害者差別や優生思想を許さない社会づくりに全力をあげる決意です。

 障害者権利条約や障害者差別解消法に基づく制度や施策の実施を通じて国家が広げた優生思想を一掃していかなければなりません。


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