2024年7月4日(木)
主張
マイナ保険証強要
患者の不利益を顧みない姿勢
マイナ保険証の利用が増えないなか、厚労省は5月から7月を「利用促進集中取組月間」とし、12月の保険証廃止に向け利用拡大キャンペーンに「総力を挙げて取り組む」としています。5日には武見敬三厚労相らが、利用者が増えているという薬局を視察しアピールする力の入れようです。
■あの手この手でも
そのなかで、薬局で「マイナ保険証でないと薬は出せない」と言われた事例が起き、現行の健康保険証の患者が診療順を後回しにされる事態も起きています。12月からはマイナ保険証でなければ使えないという誤解も広がっています。
厚労省が、医療機関や薬局の窓口で「健康保険証をお持ちですか」に替えて「マイナ保険証をお持ちですか」「次回はマイナ保険証をお持ちください」と声をかけるよう促し、マイナ保険証の利用者が増えたところには見返りとしてお金を支給しているためです。
厚労省は1月から、マイナ保険証の利用率が昨年10月から5ポイント以上増えたところに支援金を出してきましたが、利用率は低迷。そこで「集中月間」では利用者数の増加に応じ診療所や薬局に最大10万円、病院に最大20万円の一時金を出すことにしました。それでも利用率は5月時点で7・73%と4月比1・17ポイント増にとどまり、今度は一時金を20万、40万と倍に上げました。
コロナ禍での感染防止補助金など通常、補助金は申請が必要ですが、マイナの場合は申請不要で自動的に医療機関などの口座に振り込まれる破格の扱いです。
■巨額の税金を投入
同省は2023年度の補正予算でマイナ保険証の普及に向けた取り組みの推進として887億円の予算を計上しました。
今年の診療報酬改定では、マイナ保険証の一定の利用実績などの要件を満たす医療機関には初診料に80円を加算。そこを受診する患者は、マイナ保険証か現行の保険証かにかかわらず負担増となりました。
政府はすでにマイナンバーカードの取得やマイナカードを健康保険証とひも付けた人などへのポイント付与に約1兆3800億円の税金を使っています。
巨額の税金を投入してもマイナ保険証の利用が伸びないのは、窓口で有効期限切れや被保険者である資格確認が無効と出たりする事態が起きているからです。これでは保険証の意味がありません。誤って別人にひも付けられることへの国民の不安も消えていません。
しかし、武見厚労相は「引き続き利用促進に丁寧に取り組む」として現場の混乱や患者の不利益を顧みない姿勢です。
処方箋があれば薬は出せます。マイナ保険証を強要するようなキャンペーンはやめ、マイナ保険証でないと薬を出せないという誤った対応は直ちに是正させる必要があります。厚労省はマイナ保険証の患者の診療順を優先することを認めています。しかし、そもそもマイナンバーカード取得は任意です。差別的な対応は許されません。
今年度予算で政府は社会保障費の自然増分を約1400億円圧縮しました。税金は、強引なマイナ普及ではなく医療の充実に使うべきです。健康保険証廃止の中止、存続を求めます。