2024年7月2日(火)
きょうの潮流
毎年、夏が近づくころ、放送の世界では各団体が優れた番組を顕彰する各種の賞を贈っています▼今年の「ギャラクシー賞」(主催・放送批評懇談会)では、連続ドラマW「フェンス」(WOWOW昨年3月放送)がテレビ部門大賞を受賞しました。「現在進行形の沖縄の諸問題に正面から切り込んだ、エンターテインメントと深い問題意識を見事に両立」と絶賛されました▼企画したのは、NHK沖縄放送局で米軍犯罪を中心に取材してきた北野拓プロデューサー(現在はフジテレビ所属)です。授賞式で、日本側が思うように捜査できない裁けないもとで沖縄の人たちが犠牲になってきた深刻な現実にふれ、「性犯罪は政治的なこともあり、なかなか訴えることができないみたいなことがあり、いつかドラマにしたいなと思っていました」と▼しかし、制作したのにNHKで放送されませんでした。「各社を回り、WOWOWに拾ってもらった」(北野氏)という曲折を経て、ようやく放送にこぎつけました▼それにしても、なぜNHKは放送しなかったのか。米軍基地や日米地位協定という国民を苦しめている深刻な題材を扱ったドラマだったからなのか。放送の自律という視点からも疑問が残ります▼題名のフェンスは米軍施設、女性蔑視などの暗喩です。支配層の知られたくない事実を描けば、ある種の“フェンス”が現れる…。それを恐れない作品が増えてほしい。日米両政府による隠蔽(いんぺい)行為が次々と明らかになる今、その意義は大きい。