2024年6月28日(金)
政権追い詰めた共産党の論戦 通常国会150日(4)
「共同親権」・入管・選択的別姓…
「人権後進国」脱却迫る
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今国会で岸田政権は人権を巡り、ジェンダー平等、子どもや外国人の人権などを踏みにじる悪法を数の力で次々と強行しました。日本共産党は「こんな人権後進国でいいのか」と対決し、「個人の尊厳、全ての人の人権が尊重される社会をつくる新しい日本を」と脱却を迫りました。
子の安全損なう
離婚後「共同親権」を導入する改定民法を巡っては、医療、教育、福祉などの現場から怒りの声が上がり、与党からも懸念が相次ぐ異例の事態となりました。
改定民法は、父母の協議が調わなくても、合意のない父母にも「共同親権」を裁判所が定めることのできる仕組みを導入します。「共同親権」の合意を促す方向で運用されるとの懸念から、DV(配偶者などからの暴力)や虐待当事者ら約700人が3月29日、「人間関係、強制するな」と廃案を求めて声を上げるなど、新しい運動が湧き起こりました。
日本共産党の本村伸子議員は4月3日の衆院法務委員会の参考人質疑で、小泉龍司法相も改定案で紛争が増えると審議で認めたとし「新たな人権侵害が起きるのではないか」と質問。DV被害者の斉藤幸子さん(仮名)は「子どもの安全・安心が損なわれないか心配だ。当事者の声を聞いてほしい」「子どもの成長の節目で別居親の同意が必要になる。どこが『子の利益』になるのか」と語りました。
参院での審議では、「共同親権」の場合、離婚後も父母の収入が合算され、所得制限のある公的支援が受けられなくなる重大な懸念が浮上しました。
仁比聡平参院議員の調査で、親の収入などが要件となる各省庁の支援策が少なくとも32件(5月16日時点)に上ることが判明。共産党が合意のない「共同親権」が子どもに与える影響を事実に即して明らかにしたことが、急速に反対世論を広げる力になりました。
深刻な人権侵害
華僑や在日韓国人、日系ブラジル人などの当事者などから撤回を求める声が広がる中、当事者の声を無視して強行されたのが外国籍住民の永住許可を取り消す要件を盛り込んだ改定入管法・技能実習法です。
改定法は、永住許可制度の「適正化」として、日本で永住者資格を持つ外国人が▽税金や社会保険料を未払い▽在留カードの常時携帯義務違反など入管法が定める義務を守らない―などの場合に永住者資格を取り消せる制度を新設します。
仁比氏は6月6日の参院法務委員会で、永住許可取り消し制度を盛り込むことに対し、「当事者から撤回を求める声が広がっている。この声にどう応えるのか」と迫りました。岸田首相は「当事者のヒアリングは行っていないが、当事者の意見は適切に踏まえている」と強弁し、具体的根拠を示せませんでした。
育成就労制度は、深刻な人権侵害の温床となってきた技能実習制度を「育成就労」と言い換えるだけで、看板の掛け替えにさえなっていません。
5年間で技能実習生の失踪者は4万人に上りますが、原因究明と再発防止策は曖昧にされ、職場を移る「転籍」も制限。仁比氏は14日の参院本会議で、「自民党政治の外国人差別と排外主義はどこまで底深いのか」と抗議。「苛烈な外国人差別と迫害の歴史、真の共生社会への強い要求を真正面から受け止めるべきだ」と主張しました。
ジェンダー平等
長年にわたる女性たちの訴え、ジェンダー平等を求めるムーブメントにより、選択的夫婦別姓の実現を求める声は経済界からも上がっています。
田村智子委員長は19日の党首討論で、選択的夫婦別姓の早期実現を迫ったのに対し、岸田首相は「女性に大きな不利益が生じていることは重く受け止める」と述べる一方、「さまざまな角度から議論を深める必要がある」などと後ろ向きの姿勢に終始しました。
田村氏は、夫婦の95%で女性が結婚後に改姓し、アイデンティティーの喪失、キャリアの断絶などに直面している実態を示し、一日も早く法案を国会で審議するよう要求しました。
倉林明子議員は21日の参院本会議で、男女賃金格差の是正、単身高齢女性の貧困やケア労働者の処遇改善などについて政府の姿勢を追及。さらに、正規雇用男性労働者の賃金を100とした正規女性、非正規男性、非正規女性の賃金比率の公表と、企業に原因分析と是正措置を義務付けるよう迫りました。
ハラスメント根絶も喫緊の課題です。宮本徹議員は5月29日の衆院厚生労働委員会で、ハラスメントを受けた労働者が会社の窓口に相談しても救済されない実態を示し、国際労働機関(ILO)のハラスメント禁止条約批准と包括的なハラスメント禁止の法整備を求めました。(つづく)