2024年6月13日(木)
主張
ライドシェア解禁
安全を壊す規制緩和はやめよ
自動車の営業用免許である第2種免許を持たない一般ドライバーが、スマートフォンのアプリで集客し、自家用車を使って有償で乗客を運ぶ「ライドシェア」が、4月から東京23区など地域や時期、時間帯を限定して解禁されました。これまでは、安全上の理由などから「白タク」として禁止されていたものです。
安全への国民の不安の声が強いことから、全面解禁ではなくドライバーをタクシー会社が雇用する「日本版ライドシェア」としての導入でした。政府のデジタル行財政改革会議は、タクシー事業者以外のIT企業などの参入を認めるよう「2024年6月に向けて議論を進めていく」とライドシェアの全面解禁を迫っていました。
■異例の「意見」つけ
しかし、自交総連など労働組合やタクシー業界の反対、国民の不安を背景とした政府内の慎重論もあり、5月30日の岸田文雄首相、河野太郎規制改革相、斉藤鉄夫国土交通相の会談で、新たな法制度については「期限を設けず議論」するとされました。
翌日の規制改革推進会議がまとめた答申は、ライドシェアの全面解禁を「実施事項」として記載できなかったものの、「今後の検討課題」として異例の「意見」をつけ、そこで「タクシー事業者以外の者が行うライドシェアを位置付ける新たな法制度について、次期通常国会の法案提出を視野に、年末に向けて法案化作業を直ちに開始すべきである」としています。
「日本版ライドシェア」はタクシー事業者が運行を管理することになっています。しかし、それでプロでないドライバーが運転する不安が解消するわけではありません。ましてやドライバー教育や安全運行のノウハウを持たないアプリ提供事業者の参入は安全をないがしろにするものです。
規制改革推進会議答申の「意見別紙」は、「性犯罪対策・事故防止の事前審査」に一項目をあてています。これは、逆にライドシェアの危険性を浮き彫りにしています。
■不足解消するには
ライドシェア解禁の口実は、「地域交通の担い手や移動の足不足」です。
しかし、タクシー産業が衰退したのは、需給調整の規制廃止を柱とする02年の規制緩和で過当競争と低賃金が引き起こされたためです。あまりのひどさに、09年と14年に供給過剰を再規制する法改正がされたほどです。
それでも、タクシードライバーの労働条件は、全産業より長時間で賃金は年収で80万円低くなっています。車両はあっても、ドライバーが足りないことがタクシー不足の一因です。
財界の経済同友会は、2月1日に「なんちゃってライドシェアで終わらせないために」という副題をもつライドシェアの全面解禁を迫る政策提言を出しています。新経済連盟も5月14日に「日本型ライドシェアとライドシェア新法整備」を提言するなど依然として、ライドシェアの「全面解禁」を求める動きが絶えません。
地域の交通を守るには、日本版のライドシェアやライドシェアの全面解禁でなく、タクシードライバーの待遇改善が必須です。