2024年6月2日(日)
主張
規正法・自公維合意
金権腐敗の温床はそのままだ
自民党派閥による裏金事件の温床だった政治資金パーティーをはじめ、企業・団体献金の禁止に踏み込まない「修正」案では、国民の不信は募るだけです。強行すれば岸田文雄・自公政権は国民から完全に見放されることになるでしょう。
裏金事件を受けた政治資金規正法改定案をめぐり岸田首相は公明党の山口那津男代表、日本維新の会の馬場伸幸代表とそれぞれ会談し、新たな「修正」で合意しました。しかし、パーティー券購入者の公開基準額を「5万円超」に引き下げ、政党が党幹部らに渡す非公開の政策活動費を10年後に公開するというだけです。企業・団体献金禁止や政策活動費の廃止など抜本改革とはかけ離れています。
■「同じ穴のむじな」
自民と公明の合意は、パーティー券購入者の公開基準額を、現行の「20万円超」から「5万円超」にするものです。5万円以下は非公開のままです。政治家は今でも、名前を出すのを嫌う企業から基準額を超える多額の券を買ってもらうため、企業と示し合わせ、企業が買った分を従業員や関連会社が買ったことにし、それぞれの購入額が基準額以下になるよう名義を分散し、公表を避けています。
20万円超から5万円超にしても「直径20メートルの抜け穴を5メートルにするようなもの」です。企業によるパーティー券購入を温存することに変わりはなく、そこから裏金をつくる抜け道は残ったままです。
しかも、5万円超にするのは3年後の2027年からとされ、それまでは20万円超が続きます。
公明党の山口代表は昨年末、裏金事件の発覚を受け「(自民党と)同じ穴のむじなに見られたくない」と批判していました。しかし、これでは結局、「同じ穴のむじな」です。
自民と維新の合意は、政策活動費の支出状況を領収証などを含め10年後に公開するというものです。
しかし、10年間は非公開で、「ブラックボックス」のままです。しかも、10年後に違法・不適切な支出が分かっても、党幹部や議員の交代、政党の離合集散などがあれば責任はあいまいにされてしまいます。
さらに「制度の具体的な内容については、早期に検討が加えられ、結論を得る」とされ、仕組みの決定は先送りされています。
決定までは「組織活動費」「選挙関係費」など大まかな項目別に支出年月・額を政治資金収支報告書に記載することになりますが、具体的な使い道が不明な「ブラックボックス」の状態が続きます。
■自民党に手を貸す
維新は、日本共産党、立憲民主党、国民民主党、有志の会とともに、(1)企業・団体献金の禁止(2)政策活動費の廃止(3)政治家に会計責任者と同等の責任を負わせる措置―を求めてきました。馬場代表が自民党案に「基本的に賛成する」と述べたことは、この3点の一致をほごにするものです。
公明、維新は、「修正させた」という形をつくり、結局、抜本的な改革をせずにやり過ごしたい自民の思惑に手を貸しました。自民党は改定案の4日の衆院通過を狙っていると報じられています。「金権腐敗」の温床をそのままにしての強行などもってのほかです。