2024年5月31日(金)
学費値上げ反対 無償化へ
民青学習会 田村委員長の講演
日本民主青年同盟(民青)が28日に行った緊急学習会「学費値上げ反対、高等教育無償化を求める」では、日本共産党の田村智子委員長が講演しました。限界を超える学費負担をめぐる現状と、無償化に向けた展望を語りました。
学生のいまと将来奪う
![]() (写真)講演する田村智子委員長=28日、党本部 |
田村氏は中央青学連が開始した学費値上げ反対、高等教育の無償化などを求める署名運動にエールを送り、「青年・学生の切実な願いにこたえ、要求に基づく共同を築こうというものだ」と期待を示しました。
田村氏は、多くの学生が高い学費負担に苦しみ、奨学金の返済に不安を抱いていると指摘。「自分で学費を払うために週5日バイトをしている」など、生活に困窮する学生の声を紹介。「勉強の時間が削られ、それでも学費が払いきれずに追い詰められる学生も少なくない」と語りました。
高すぎる学費が保護者にも深刻な負担を与えていると指摘。1993年以降、実質賃金が減少するもとで「学費が急上昇した」と告発。東京私大教連の調査では、自宅外の学生への仕送りが2023年度は平均8万9300円(1日当たり653円)まで減少し、「90年度の4分の1にまで落ち込んでいる」と述べました。
奨学金でも、2~3人に1人の学生が平均300万円もの借金を背負い社会に出ており、奨学金総額は10兆円だと指摘。「限界を超える学費負担が、学生のいまと将来を奪っている」として、「これは当たり前ではなく、異常なことだ―この声を学生の中に起こすときだ」と語りました。
自民政治の破綻ここに
![]() (写真)民青主催の学習会で講演する田村智子委員長(右奥)=28日、党本部 |
田村氏は、日本共産党が無償化すべきだと繰り返し質問し、提言も出し、他党も主張するもとで、「岸田政権も学費負担の重さを否定できず、限定的だが『無償化』を名乗る政策を取り入れざるを得ない」と指摘。しかし、その足元で、授業料そのものが国立・私立とも値上げされているとして、東京大学が授業料値上げを検討し、私大も学生数1万人以上の大学の35%、14大学全学部で値上げしていると告発しました。
田村氏は、中央教育審議会(中教審)の特別部会で、私大学長が「国立・公立大学の家計負担は150万円/年程度に上げる」と発言し、自民党調査会がまとめた提言案も「値上げも視野にいれた授業料の設定」と報じられていると述べました。
「“大学の質を上げる、国際競争力をつける”というが、大学の研究力の低迷をもたらしたのは、自民党政治による予算削減が最大の原因だ」と力説しました。国立大学や歴代文科相、名だたる科学者からも、削減した予算を元に戻し、高等教育予算を増やすべきだと声が上がっているとして、「中教審も自民党提言案も国の予算を増やすことを諦め、授業料値上げで学生からお金を集めようという実に恥ずかしい議論に陥っている」と告発。「ここに、自民党政治の高等教育政策の破綻、行き詰まりがはっきりとあらわれている」と強調しました。
財界・大企業の求めに応じて、国立・私立大学ともに基盤的経費を削るなど、「基礎的研究や経営基盤への予算を限界まで削った」と話し、「負担軽減というが、学費負担が重すぎると認めながら負担を増やしておいて、何が負担軽減か。矛盾と破綻の極みだ」と批判しました。
そのうえで、限定的な負担軽減策は学生を分断するとして、「求められているのは、重すぎる学費そのものを下げ、すべての学生の学ぶ権利を保障することだ」と述べました。「署名運動から値上げを進めてきた政治の責任を知らせ、自民党政治を終わらせて学費無償化の新しい政治の展望を示す民青同盟の役割が求められている」と語りました。
教育受ける権利の保障
![]() ※OECD「Education ata Glance 2021」から作成 |
田村氏は、1980年代後半から、国立大は毎年、授業料と入学金が交互に値上げされ、私学助成の抑制による私学の学費値上げも止まらなかったと指摘。71年、国立大授業料は1万2000円、私大平均9万1000円でしたが、「受益者負担」を口実に国立大で値上げされ、それが私大の値上げを誘発したとして、50年間で私大は10倍、国立大で50倍もの値上げになったと告発しました。
90年代後半には、実質賃金が減少し、保護者の負担能力が追い付かなくなるもとで、政府は、99年から有利子奨学金を増額し、採用基準を緩和したと指摘。貸与人数も1人当たりの貸与額も爆発的に増えたとして、「返済能力に関係なく、学生本人に100万単位の借金を負わせるなど、契約としても異常だ。しかも、自民党政治は“返すのは当然”と、返済免除は極めて厳しい」と告発しました。
国公立大授業料と公的負担割合に話をすすめた田村氏は、日本の国立大授業料への公的負担割合は32%と、OECD(経済協力開発機構)加盟国中ワースト2位だと指摘。デンマークやエストニアなど3分の1の国では授業料無償を実現している一方で、イングランドの学費はこの10年間で3倍以上と極端に上がり、米国も上がっていると語りました。「世界でも際立って貧困な公費支出を増やすのか、それとも極端な値上げに進むのかが問われている。日本は、無償化の方向へと進む国になろう」と呼びかけました。
中央青学連の署名が触れている国際人権規約について、田村氏は、「日本が国際社会に対して、高等教育を段階的に無償化していくことを約束しているということだ」と強調しました。
日本政府は1979年に国際人権規約を批准しながら、高等教育の無償化をうたった13条2項cを留保し、自民党政権で留保撤回の動きはなかったと指摘。民主党政権下の2012年に留保を撤回したものの、直後に自民党が政権に返り咲き、批准後に私立大での値上げがひどくなったと告発しました。
そのうえで国際人権規約13条1項では教育の機会は、すべての人に保障された権利とされ、憲法の理念に立つ日本の教育基本法も「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならない」としていると紹介。しかし自民党政治は、これらを脇に置き続け、高等教育予算を減らして『受益者負担論』を押し付けてきた。今回の署名の根本には、憲法と国際条約を守れという極めて当然の原則がある」と激励しました。
全国で運動 希望がある
![]() 出典:財務省「財政統計」および各年度の予算書。当初予算ベース、単位:円 |
田村氏は、昨年、日本共産党が発表した教育無償化にむけて、直ちに学費半額を求める政策や、財源提案を紹介。この中で軍事予算と教育予算の推移を示し「戦争国家づくりのために、軍事費の増額が、教育予算丸ごとよりも大きい。大軍拡を止めることは、高等教育無償化への大きな道筋にもなる」と訴えました。
運動の展望として田村氏は、2010年代半ばから給付奨学金を求める署名運動が大きく広がったことを紹介。「当初は否定していた自民党も態度を変え、その後、急激に実現に動いた。署名運動に示された圧倒的な国民世論が事態を動かした」と語りました。
田村氏は「署名が各大学のなかで取り組まれ、全国に広がる―学生が動くことは、社会と政治を動かす大きな力になっていくことを期待したい」と語りました。あわせて、自身の学生時代にとりくんだ学費値上げ反対運動の経験を紹介し、「わずかな人数からの運動だったが、大きく盛り上がり、社会的インパクトを与えることを実感した」と語りました。
各大学に根差して学費値下げを求める運動に取り組むことは、学生の要求運動にもつながっていくと述べ、「さらに全国の運動として取り組むことで、大きく政治を動かす希望がある。励まし合って各大学のなかに学生の運動を起こしていこう」と呼びかけました。












