2024年5月26日(日)
主張
規正法・自民党案
金権腐敗の根源に手を触れず
自民党の派閥パーティーの裏金事件を受け、政治資金規正法改定案の審議が、衆院政治改革特別委員会で始まりました。自民党が単独で提出した改定案は、裏金の原資となった企業・団体によるパーティー券購入を含め、企業・団体献金の禁止に全く触れていません。同党は、事件の真相解明にも背を向けており、金権腐敗への反省は皆無です。
岸田文雄首相は、今国会の最大の焦点は、事件の再発防止に向け、規正法の改正を実現することだと述べています。本当に再発を防止する気があるなら、裏金づくりを「誰が、いつから、何のために始めたのか」の真相解明が不可欠です。
23日の衆院政治改革特別委で日本共産党の塩川鉄也議員がこの点をただしたのに対し、自民案提出者の鈴木馨祐(けいすけ)議員(党政治刷新本部座長)は「知る立場にはない」と無責任な姿勢を示しました。塩川氏が審議の「前提を欠いている」と強く批判したのは当然です。
■「抜け穴」だらけ
自民党が真相を闇の中に隠したまま作成した改定案は抜け穴だらけです。
自民案は、企業・団体によるパーティー券購入を引き続き認めます。パーティー券購入者の氏名などの公開基準額を現行の「20万円超」から「10万円超」に引き下げるだけです。
いま問題になっているのは、本紙日曜版19日号がスクープしたように、一つの企業がパーティー券を20万円超購入しても、政治家側と結託し、購入者の名義を個人や関連会社に分散し、公開しないという違法・脱法的な行為が行われていることです。公開基準額を10万円超にしても同じで、「直径20メートルの抜け穴を10メートルにするようなもので、何の解決にもならない」(日本共産党の小池晃書記局長)のは明らかです。
自民党から党幹部らに渡され、使途が公開されてこなかった「政策活動費」について、同党案は、50万円超を受け取った政治家は「組織活動費」「選挙関係費」など大まかな項目ごとに支出額を報告し、党の政治資金収支報告書に記載するとしています。領収書の添付は必要ありません。
これも「大きなブラックボックスを、少し小さなブラックボックスにするだけ」(小池氏)で、具体的な使途は一切チェックできません。50万円以下は報告の必要さえありません。ブラックボックスを廃止し、使途を全面公開すべきです。
■責任の転嫁が可能
自民案は、政治資金収支報告書を会計責任者が適正に作成していることを議員本人が確認し、その旨を記載した「確認書」を交付するとしました。収支報告書に不記載や虚偽記載の違法行為があった場合、実際には確認していないのに確認書を交付した議員には罰金が科され、公民権停止の対象になるとしています。
しかし、議員が会計責任者に命じて不正を働いたにもかかわらず、「確認はしたが不備には気付かなかった」などと言い逃れ、責任を転嫁しようとすることもできます。
自民党には抜本的な再発防止策を示す能力も、意思もありません。パーティー券購入を含む企業・団体献金の禁止を実現するため、金権腐敗を許さない国民世論と運動を高める時です。