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2024年5月19日(日)

主張

「間接差別」判決

是正への道大きく切り開いた

 一人の女性の勇気が歴史を動かしました。世界有数のガラスメーカーAGCの100%子会社で働く一般職の女性社員が、賃貸住宅の家賃を8割補助する「社宅制度」を総合職だけに適用するのは女性差別だと会社を訴えた裁判です。東京地裁は、男女雇用機会均等法が禁ずる間接的な女性差別にあたり違法だとして会社に賠償を命じました。

 判決は「事実上男性従業員のみに適用される福利厚生の措置として社宅制度の運用を続け、女性従業員に相当程度の不利益を与えていることについて、合理的理由は認められない」としました。2007年施行の改正均等法に間接差別禁止が追加されて以降、初めて間接差別を認めたもので画期的です。

 会社は判決を真摯(しんし)に受け止め、社宅制度の利用を一般職に広げるべきです。

 間接差別は、一見性別と関係なくても結果として一方の性に不利益を与える基準や制度をいいます。

 均等法の施行規則は間接差別の禁止について、▽募集・採用時に身長・体重・体力を要件にする▽転居を伴う転勤を採用・昇進の要件にする▽昇進時に転勤経験を要件にする―の3例の限定的な例示にとどめており、間接差別のほとんどが事実上、野放しになってきました。

■判断の枠を広げる

 判決は、施行規則には例示されていない「住宅の貸与」についても、合理的な理由がないときは「違法とされる場合は想定される」とし、間接差別と判断する枠組みを広げました。原告弁護団は「女性差別の是正を図る道を大きく開いた」と評価しました。

 原告は1人で10年以上会社と話し合いや団体交渉を続け20年に提訴しました。原告を支援しようと、男女賃金差別裁判を闘った多くの元原告が裁判に駆け付けました。1月29日には29人の元原告が連名で「今なお賃金や資格において差別されている日本の女性たちに希望を与える判決を」と東京地裁に要請しました。

 この判決を力に間接差別を禁止し、雇用形態による差別や低賃金の業務に女性の比率が高いことを是正させる必要があります。

■「全て禁止」明記を

 国連女性差別撤廃委員会は日本政府に対し、「雇用における間接差別の認識不足がある」と繰り返し指摘してきました。転勤や長時間労働に応じるかどうかで基本給や昇給・昇格での差別を当然とする就業規則や雇用慣行が、実際には女性を差別し男女賃金格差の要因になっています。

 企業ごとの男女賃金格差の公表により大企業ほど格差が大きいことが明らかになりました。日本共産党の田村智子委員長は3月の参院予算委員会で鹿島建設では女性は総合職の8%、一般職では94%を占め、総合職と一般職の賃金格差がそのまま男女賃金格差になっていると追及しました。

 間接差別をなくすために、労働基準法や均等法に「すべての間接差別の禁止」を明記し、企業に男女格差の実態把握、格差是正計画の策定・公表を義務付け、国が、公表拒否や是正計画の未策定、不履行を指導・監督する罰則付きの制度を設けることが必要です。

 原告が切り開いた道をさらに広げていきましょう。


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