2024年5月12日(日)
きょうの潮流
近年のドラマでは珍しい。NHKで放送されたドラマ「むこう岸」(6日放送)は、子どもの苦悩や抱えている問題をていねいに描いていました。「日本児童文学者協会賞」「貧困ジャーナリズム大賞特別賞」を受賞した安田夏菜さんの同名原作をドラマ化した作品です▼ドラマは家庭の事情で子どもが介護や家事を担う「ヤングケアラー」や生活保護への偏見、子どもの意見を聞かない親の価値観の強制…。そのなかで友情とは? 将来の夢とは? 生きるとは? というさまざまなことを想起させました▼主な登場人物の一人、病気の母親と幼い妹と暮らす樹希は、生活保護の受給に後ろめたい思いを持ち、学費が払えないからと看護師になることを諦めようとしていました▼もう一人は有名私立中学から公立へ転校してきた和真。“いい学校”への進学しか頭にない父親の押し付けに悩んでいました。そんなある日、秘密にしていた転校の理由を同じクラスの樹希に知られたことをきっかけに、二人の友情が生まれます▼暗い部分や感情に訴えるだけでなく、なんとかしたいという樹希の行動力によって、生活保護費を受給している家庭の子女がどう進学すればいいか、参考になる具体的な方法を織り交ぜながら物語が進んだことも作品を際立たせていました▼ドラマからにじんでくるのは、子どもの意見を聞いて苦しみや喜びを理解することの大切さです。訴求力のあるテレビなどが子どもの貧困、意見表明権に、もっと光をあてていいのでは。