2024年5月6日(月)
パリ平和国際会議
緒方日本共産党副委員長の発言(要旨)
4日、パリで開かれた平和のための国際会議(フランス共産党主催)で日本共産党の緒方靖夫副委員長が行った発言(要旨)は次の通りです。
平和のための闘争は、常に中心的な課題だったが、世界で平和と公正への挑戦が重大化している今日ほど重要になっている時はない。
パレスチナ・ガザにおけるイスラエルのジェノサイド(集団殺害)は、人道上一刻の猶予も許されない。イスラエルの蛮行とそれを庇護(ひご)する米政権の支援をやめさせる国際連帯を飛躍させよう。根本的な解決の道は、国連安保理決議242、338に基づくイスラエルの占領地からの撤退、パレスチナ独立国家樹立を含む民族自決権の実現、両者の生存権の相互承認である。
2年以上を経るロシアの侵略によるウクライナでの戦争は、両国民の甚大な犠牲はもちろん、食料・エネルギーなど世界経済、気候危機に深刻な地球的影響をもたらしている。国連総会は4度にわたり、加盟国の7割の賛成で、国連憲章を侵犯するロシアを非難し、ウクライナの主権、領土保全の回復を求める決議を採択した。
欧州では、戦争が起きた衝撃とロシアの脅威を最大限に使って、北大西洋条約機構(NATO)の拡大、欧州連合(EU)の軍事化により、「欧州のNATO化」が進んでいるように見える。
日本の岸田政権は、「今日のウクライナは明日の東アジア」を唱え、ロシアに加えて中国、北朝鮮の脅威を極度にあおり、国内総生産(GDP)2%にあたる軍事費の倍加、敵基地攻撃能力保有を進めてきた。さらに、先月の日米首脳会談で、日本の自衛隊を米軍の事実上の指揮下に置くなど日米軍事同盟を強化し、米軍とのグローバルなパートナーとしてともに戦うことを誓約した。大西洋を越える(トランス・アトランティック)NATOと太平洋をまたぐ(トランス・パシフィック)の二国間軍事同盟を米国中心に結び付けるものだ。
わが党は、軍備を持たず、戦争をしないとうたっている日本国憲法を蹂躙(じゅうりん)する大軍拡と日米軍事一体化に正面から反対して、軍事ではなく外交による事態の打開を訴えて闘っている。
ウクライナ問題は国連憲章に沿って解決すべきである。妨げとなっているのは、「民主主義対専制主義」という世界を分断する米政権の試みであり、ロシアの侵略を非難するが、イスラエルのガザ侵攻は擁護する「ダブルスタンダード」である。今日、国連憲章に基づく国際秩序の再建・強化こそが求められている。それを侵犯する覇権主義とはいかなる国のものであれ闘う。以上述べてきたことでいえば、米国、ロシア、地域版覇権主義のイスラエルである。
かつてのベトナム戦争では、侵略する米帝国主義反対がスローガンであった。今世紀初頭のイラクへの米国の先制攻撃では「国連憲章を守れ」が広範な侵略反対の国際連帯となったように、今日、世界平和の旗印は国連憲章の擁護である。
欧州には、戦争を防ぐ包摂的枠組みとして、多くの分野で合意を積み重ねてきた半世紀の歴史をもつ欧州安全保障協力機構(OSCE)がある。それが、有効に機能せず戦争に至ったことは、今日の東アジアにとって重大な教訓である。北東アジアは、話し合いの枠組みもないまま、既存の地域紛争に加えて米中対立、緊張の高まりの主舞台となっている。わが党は、“アジアにおいて絶対に戦争を起こしてはならない”との決意のもと、先月、「東アジアの平和構築への提言」を発表した。
そのポイントは、武力の不行使と紛争の平和的解決をうたう東南アジア友好協力条約(TAC)の実効性を高めている東南アジア諸国連合(ASEAN)が開催する東アジアサミット(EAS)の枠組みを活用することだ。現存し機能している包摂的な対話と協力の平和の枠組みを発展させようというものだ。(北東アジアの課題と提言を紹介―略)
今日、紛争や暗い側面が目立つが、わが党は長いスパンで、植民地体制の崩壊が平和と社会進歩を促進する世界の構造変化の観点から世界を見る。21世紀の世界について、一握りの大国が世界を牛耳る時代は終わり、世界のすべての国が対等・平等の資格でG193として世界政治の主人公となり、市民社会も大きな役割を果たす時代になっていると見る。大局的には、世界資本主義の諸矛盾がますます激化し貧富の格差が拡大し、資本主義を乗り超えた社会主義への、未来社会への関心が強まる時代だと希望を持ち楽観的に見ている。
西側諸国の支配勢力が軍事、政治、経済の支配のネットワークを強化している今日、世界の共産党、進歩的政党にとって、平和での連帯と協力強化は至上の要請だ。フランス共産党による「覇権の論理から解放された新しい型の協力」の提起は重要だ。わが党は、あらゆる覇権主義に反対し、国連憲章に基づく平和秩序を掲げている。それと対極にあるNATOをはじめ軍事ブロックの拡大に反対だ。来年は広島・長崎の被爆80年であり、核兵器廃絶への前進が求められる。気候危機、ジェンダー平等は平和のために不可欠な課題だ。
私は、2022年12月、ウィーンでの欧州左翼党大会の演壇から、ユーラシア大陸の東西において、文字通りトランス・コンチネンタルの連帯を呼びかけた。ここパリにおいて、改めて地球規模の連帯、共同闘争を呼びかける。








