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2024年5月4日(土)

きょうの潮流

 魂のピアニストと呼ばれたフジコ・ヘミングさんはベルリンで生を受けました。スウェーデン人の父がそこでデザインの仕事をしていましたが、ヒトラーが政権を握り5歳の時に一家で母のふるさと日本へ▼ところが日本でも戦争の気配は濃厚で外国人は排斥。「母なんて日本人なのに、年中警察に呼ばれて泣いていた。外国人と結婚したからというだけで国賊扱いだった。父も仕事もなくスウェーデンへ帰ってしまったけど、ああいう日本はごめんだわ」▼本紙のインタビューで当時の「居心地の悪さ」を語っていたフジコさん。東京芸大を卒業後ふたたびベルリンに移ってキャリアを積みますが、聴力を失います。その苦難の歩みが投影された演奏は多くの心を打ちました▼事故で手足の自由を失い、口に筆をくわえて詩画をつづった星野富弘さんも戦争の影響を受けました。山村の農業に見切りをつけ東京にとびだし、苦労の末に成功を収めた父。しかし東京大空襲ですべてが灰に。その無念が自分に託されていたといいます(『愛、深き淵より。』)▼命の尊厳とむすびつき、人々と響き合った創作活動。そこには戦争や暴力に支配されず、ありのままの存在を認める社会をめざしてきた道のりがあります。しかしいま平和が脅かされ、古い価値観にしがみつく自民党政治の悪弊も続いています▼憲法を生かす政治を、個人が尊重される社会を―。3日の憲法大集会にみなぎった思い。それは、亡くなったふたりの人生からも垣間見えてきます。


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