2024年5月1日(水)
きょうの潮流
大きな耳、輝く黄金色の毛、ふさふさの長いしっぽ…。さてあなたは何を思い浮かべますか▼たぶん頭の中に描かれたのはキツネの姿でしょう。くらし家庭面で4月に連載した「キツネの世界」。昔話や映画など世代をこえておなじみの存在だけれど、実は奥が深いその秘密に迫りました▼天敵から子どもを守るために巣穴を引っ越す「目くらましの術」。イメージよりも実は小さい、ほぼ“太めのネコ”。恋の季節に「コココーン、コーン」と鳴く。ジャンプする影が“化けた姿”に見えることも。知れば知るほど、さらに興味がわく生き物です▼筆者の塚田英晴さんとキツネとの出会いは、北海道にある大学の研究室でした。薄暗くなったころ、緑地から現れた1匹のキタキツネが、舗装された道路を平然と歩き回っていました。観察を続けるうちに「たくましさ」を感じ、研究にのめり込んだと振り返ります▼「ルルルル」と声をかけながら餌付けする映画のワンシーンが独り歩きして、観光ギツネが広がりました。しかし、こうした行為は野生動物と人との距離感を危うくもします。「親しさ」や「好意」を動物に向けても必ずしも動物には伝わらない。それどころか個体が増えて農作物を荒らしたり、病気をうつしたり▼共存するにはルールをつくり、そのルールを守ることが必要だとも。「都市のあらたな隣人として、彼らを迎える準備が必要なのかもしれない」と塚田さん。人と野生動物は共に生きることができるのか。模索は続きます。