2024年4月28日(日)
主張
学術会議改革
日本の学術壊す拙速な法人化
政府は、内閣府の「日本学術会議の在り方に関する有識者懇談会」に二つのワーキンググループを設置しました。昨年12月の大臣決定「日本学術会議の法人化に向けて」の具体化を検討するためです。
学術会議は、この大臣決定に対して強い懸念を表明する声明を23日の総会で採択しました。政府は、学術会議が表明した懸念をうけとめ、尊重すべきです。
大臣決定は、自民党の意向に沿った「法人化ありき」の方針です。▽政府が任命する学術会議評価委員会の意見を聞いて中期計画を策定する▽学術会議の会員選考に対して外部者による委員会が意見をのべる▽組織・運営に対しても外部者が過半数をしめる委員会が意見をのべる―など学術会議に政府が介入する仕組みを新たにつくろうとしています。学術会議の独立性を脅かす重大な内容です。
■三つの条件求める
学術会議の総会でも「法人化する立法事実も示されず、学術会議の自律性も保障されない」「学術会議が国の機関であるという歴史を無視したもの」「学術会議の活動がどういうものか理解されていない」など懸念の声が続出しました。
学術会議の声明は政府の検討に対して、(1)政府への勧告機能を含む実質的機能の確保とそれをささえる十分な財政基盤(2)組織・制度の自律性・独立性の現在以上の確保(3)会員選考は学術会議が自律的・独立的に行う―の3点が満たされるよう求めました。国民と世界に貢献するナショナル・アカデミーとして学術会議が役割を発揮するうえで譲れない最低限の保障です。
政府は、夏にも「法人化」の概要を具体化し、法案化をすすめる構えです。「法人化ありき」の拙速な検討で「学術会議の改革」を強行すれば、梶田隆章・前会長も危惧していた「日本の学術の終わりの始まり」となりかねません。「期限ありきではなく、学術会議と意思疎通を図りながら」とした政府答弁(23日、参院内閣委員会)を厳守すべきです。
政府が学術会議の「改革」を言い出したのは、2020年10月に菅義偉首相(当時)が学術会議会員候補6人の任命を拒否し、学術会議に問題があるかのように論点をすり替えたことからです。これをうけて自民党のプロジェクトチームが提言を発表し(同年12月)学術会議の法人化などの「改革」を求めました。この提言が政府の「学術会議改革」のベースにあります。
■戦争国家防ぐ課題
自民党の提言を出した中心人物である当時の政調会長の下村博文、プロジェクトチーム座長の塩谷立、座長代理の山谷えり子の各議員は、裏金議員として自民党が処分した人物です。裏金問題で真相解明に背を向け、まともな「政治改革」ができない岸田内閣・自民党に学術会議の改革をいう資格はありません。
岸田内閣は、日米首脳会談で米軍・自衛隊の指揮統制の連携強化を約束するなど戦争する国づくりを強めています。そのために、軍事研究を行わない声明を再三採択した学術会議を変質させようとし、「改革」の押し付けを図っているのです。学術会議の独立を守ることは、戦争を食い止めるうえでも大事な課題です。