しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2024年4月24日(水)

岸田首相に対する志位議長の質問

衆院予算委

 日本共産党の志位和夫議長が22日の衆院予算委員会で岸田文雄首相に対して行った質疑でのやりとりは次の通りです。


写真

(写真)質問する志位和夫議長=22日、衆院予算委

志位 「70年来の安全保障政策を根底から覆した」――駐日米大使の発言はズバリ真実を語っている

首相 (答えず)専守防衛に徹する

志位 歴代政権が憲法に基づく「平和国家」の理念としてきたものを「根底から覆した」

 志位 私は、日本共産党を代表して、日米首脳会談について、総理に質問いたします。

 エマニュエル駐日アメリカ大使は、総理を米国に国賓待遇で招待した意義について、「産経」のインタビューで次のように語っています。

 「岸田政権は2年間で、70年来の(日本の安全保障)政策の隅々に手を入れ、根底から覆した。防衛費のGDP(国内総生産)比2%への増額、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有、そのための(米国製トマホークの)購入に踏み切った。防衛装備品の輸出にもめどをつけた」

 「70年来の政策の隅々に手を入れ、根底から覆した」――私は、エマニュエル大使のこの評価は、ズバリ真実を語っていると考えますが、総理はどうお受け止めになったか。

 私は、18日の(衆院)本会議質問で、この問いをあなたにぶつけましたが、答弁がありませんでした。「根底から覆した」という評価は、間違った評価なのか、正しい評価なのか。端的にお答えください。

 首相 訪米についての米国大使の発言でありますが、今回の訪米にあたっては、この日米それぞれグローバルパートナーとして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序、これを維持強化していく大切なパートナーであるということをメッセージとして送りました。あわせて、この日米同盟がインド太平洋の平和と安定と繁栄にとって礎であり、一層強化していくことを確認したしだいであります。

 そして、私の政権においてさまざまな取り組みを行った、これはその通りでありますが、しかし、訪米についても、そして今日までの政権の取り組みについても、すべてこれはわが国の憲法あるいは国際法、そして国内法、この範囲内での対応であるということ、これは間違いないところであります。

 よって、平和国家として専守防衛に徹する、他国に脅威を与えるような軍事大国にはならない、こういった基本方針については、いささかも変わっておりませんし、今後も変わることがないと考えています。

 志位 間違った評価とはおっしゃいませんでした。「専守防衛」ということを言われましたけれども、射程2000キロから3000キロの大陸の奥深くまで届く極超音速ミサイルなど敵基地攻撃能力の兵器の保有を進めながら、「専守防衛」というのは成り立ちません。そして、総理がやってきたことは、歴代政権が憲法に基づく「平和国家」の理念としてきたことを、ことごとく、「根底から覆した」ものであって、この点で、私は、エマニュエル大使の発言というのは、まさに図星だと考えます。

志位 指揮統制は、情報でも、装備でも、圧倒的に優越的な立場にある米軍主導で行われ、自衛隊は事実上、米軍の指揮統制のもとに置かれる

首相 自衛隊は独立した指揮系統に従って行動する

 志位 今回の日米首脳会談は、この道をさらにエスカレートさせようというものになっています。

 その最大の問題は、バイデン米大統領が、「日米同盟が始まって以来、最も重要なアップグレード」とのべたように、米軍と自衛隊の指揮統制のかつてない連携強化に踏み込んだことにあります。

 総理は18日、私の質問に対する答弁で、「日米首脳会談においては、日米が共同対処を行う場合に、さまざまな領域での作戦や能力を切れ目なく緊密に連携させていく観点から、シームレスな統合を可能にするため、日米でそれぞれの指揮統制の枠組みを向上することで一致をいたしました」とのべました。

 それでは、どういう「日米共同対処」をやろうというのか。パネルをご覧ください。これは「しんぶん赤旗」日曜版の情報公開の求めに応じて開示されたもので、2022年12月に防衛省が作成した内部文書であります。敵基地攻撃における「日米共同対処」の「オペレーションのサイクル」が、図解されております。「目標情報の共有、反撃を行う目標の分担、成果についての評価の共有等について、日米で協力を行う」。これが明記されています。

 重要なことは、ここに「指揮統制」と明記していることです。つまり米軍と自衛隊が指揮統制でも緊密な協力を行うことが明示されております。

 総理、そうなりますと、指揮統制は、情報でも、装備でも、圧倒的に優越的な立場にある米軍主導で行われ、自衛隊は事実上、米軍の指揮統制のもとに置かれることになることは明らかではありませんか。いかがでしょう。

 首相 日米間で、それぞれの能力を発揮するために緊密な連携を行うこと、これは当然のことでありますが、自衛隊のすべての活動は、主権国家たるわが国の主体的判断のもとで、日本国憲法、国内関連法令に従って行われること、そして、自衛隊および米軍がそれぞれ独立した指揮系統に従って行動すること、これは何ら変更がありません。これは法令において日本国内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮官と定められているわけですし、日米ガイドラインにおいても、おのおのの指揮系統を通じて行動する、おのおのの憲法に従って対応する――これは明記されています。このように重ねて日本の指揮系統は独立したものであるということを確認しています。この方針は全く変わりませんし、それに基づいて具体的な対応が行われるものであると考えています。

志位 軍事の現場をよく知る専門家は、米軍に全面的に頼ることになると言っている。「独立した指揮系統」といっても何の保障もない

首相 自衛隊の行動が憲法の外にでるなど、あってはならない

志位 建前を言っているだけ。「独立した指揮系統」の実態的保障については言えない

 志位 総理は、自衛隊は「独立した指揮系統」でやるんだということをおっしゃったわけでありますが、軍事の現場をよく知っている専門家は何と言っているか。

 自衛隊幹部を務め、防衛大臣政務官、外務副大臣を歴任した自民党の佐藤正久氏は、先日のテレビ番組でこうおっしゃっています。

 「反撃能力を日本が持とうとすると、目標情報を一つとっても、アメリカから相当情報をもらわないと目標情報はとれない。目標情報を日米で共有した後に、この目標は日本が、この目標は日米、この目標はアメリカと目標配分もやらないといけない。さらに、この目標についてはどのミサイルを何発撃つとか、実際にその効果判定もしないといけない」。こうのべて、「目標情報」から米軍頼みになるとのべています。

 もうひとかた、元航空自衛隊第7航空団司令の林吉永氏は、「しんぶん赤旗」の取材に答えてこうおっしゃっています。

 「自衛隊には、国内は別にして、海外のどの敵基地を反撃していいか、反撃した結果どういう戦果が出たのか把握する能力はない。そこは米軍に頼ることになる。米軍の判断に引きずられ、反撃に際限がなくなる。作戦が米軍主導に陥って、日本の『専守防衛』が『アメリカ流の戦争』にとって代わるという、『戦争指揮』に悩ましさ、危惧が生じるだろう」

 軍事の現場をよく知っている専門家は、敵基地攻撃をやろうとすれば、米軍に全面的に頼ることになると言っている。これは、実態がそうなると言っている。総理が、いくら自衛隊は「独立した指揮系統」と言っても、何の保障もないんじゃないですか。保障をあげてみてください。

 首相 反撃能力についてご指摘がありましたが、反撃能力そのものについても、これは日本の国民の命や暮らしを守るために、日本国憲法の範囲内で、国内法の範囲内で対応するものであります。その外に出るものではまったくありません。そして、そのうえで、米国の情報に頼ることが大きいから結局引きずられるというご指摘がありました。情報の共有、これはもちろん大事なことでありますが、少なくとも日本の自衛隊の行動が憲法の外に出るとか、平和安全法制の外に出る、こういったことは決してあってはならない、これは当然のことであります。そうしたこの日本の立場や考え方、あるいは制限については、これまで日米の間でガイドラインの作成等を通じて再三確認をしています。その範囲内で日本は行動する、これは今後とも変わることはないと考えています。

 志位 結局あなたは、「独立した指揮系統」でやるんだという建前を言っているだけなんですよ。私が聞いたのは、その実態的保障なんです。保障については言えない。

 朝日新聞の取材に答えて、現役の自衛隊幹部はこのように言っています。

 「共同作戦の実行では米軍の圧倒的な監視・偵察能力、装備に頼らざるを得ず、独立した指揮系統では日本は動けない。今後は『独立した指揮系統』という岸田答弁がネックになる」

 ここまで言い切っている。あなたの答弁通りだったら自衛隊動けないと(いうことになる)。ですから「独立した指揮系統」の保障などどこにもないんですよ。

志位 米軍の「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)の基本方針では、「同盟国とシームレスに統合する」と明記している

首相 米軍のIAMDと日本の「統合防空ミサイル防衛」はまったくの別物

志位 いくら「別物」だと言っても、連携相手の米軍が「シームレスな統合」が絶対に不可欠だと言っている

 志位 さらに進めたいと思います。政府は、敵基地攻撃と「ミサイル防衛」を同時に行う「統合防空ミサイル防衛」――IAMDを推進するとしております。パネルをご覧ください。これは、米インド太平洋軍が2018年に発表した「IAMDビジョン2028」の概要であります。

 ここでは、米軍のIAMDの基本方針として、「米インド太平洋軍は、自由で開かれたインド太平洋を維持するために、自由な作戦行動と戦力の投入を可能にするよう、高い能力をもつ同盟国とシームレスに統合する能力を備え、あらゆる航空・ミサイル脅威から重要な基地と機動部隊・遠征部隊を防衛する」、こう明記しています。

 総理は、日米首脳会談で「シームレスな統合を可能にすること」を確認してきたとおっしゃいましたが、自衛隊が進めるIAMDは、米軍のIAMDと「シームレスに統合」していくということになるということですね。

 首相 この米軍のIAMD――「統合防空ミサイル防衛」ですが、これは名称は似通っていますが、わが国の「統合防空ミサイル防衛」能力はまったく別物であります。わが国の「統合防空ミサイル防衛」能力は、米国の要求に基づくものではなく、また米国が推進するIAMDとは異なる、わが国主体の取り組みです。

 そのうえで自衛隊のすべての活動、さきほどより申し上げているように、日本国憲法、平和安全法制、こういった国内の法令に従って対応していきます。それでも引きずられるのではないかという指摘ですが、これは法令上、自衛隊の最高指揮官は日本国の総理大臣です。総理大臣がこうした指揮官としての責任をしっかり果たしていく、そのなかに憲法の範囲内で平和国家としての構えのなかでしっかりと対応していく、これは当然のことであると考えています。

 志位 総理は、日本のIAMDと米国のIAMDはまったく別物だとおっしゃったが、いま示したように、「シームレスに統合する」と米側が言っているわけです。

 ここに米空軍が発行している『航空宇宙作戦レビュー』を持ってまいりました。ここには「IAMDビジョン2028」に関する公式の解説が載っています。筆者は米軍太平洋IAMDセンター所長のリン・サベージ大佐です。

 そこでは、「IAMDの能力を米国が単独で高めるのは実行不可能」だとのべたうえで、「インド太平洋軍の広大な管轄では、同盟国やパートナー国が絶対に不可欠であり、地域の同盟国とシームレスに統合するというビジョンは、新しいビジョンの革命的な側面だ」と力説しています。

 総理がいくら「別物」だと言っても、連携相手の米軍が「シームレスな統合」が絶対に不可欠だと言っているわけです。

志位 米側の公式文書は、米国と同盟国との指揮統制が一体になると言っている

首相 指揮統制が一体化するとか、相手の指揮下に入るとかはない

 志位 そして、この米軍文書は、「シームレスな統合」とは、「すべてのプレーヤー、すべてのコーチが同じプレーブックを持ち、互いの動きやルールを熟知し、首尾一貫して効果的に訓練し、一緒に作戦を実行する。プレーヤーとコーチは混ざり合い、一緒に訓練し、敵からは準備の整った一つのチームとして見られる」とのべています。

 つまりIAMDを実施しようとすれば、米国と同盟国との「シームレスな統合」が絶対不可欠となり、プレーヤー――各国部隊と、コーチ――各国指揮官が混然一体となって作戦を遂行する、米国と同盟国との指揮統制が一体になると(言っている)。これは米側の公式文書ですよ、いかがですか。

 首相 シームレスな統合を可能にする、シームレスな統合という言葉が使われますが、これは日米が共同対処を行う場合に、さまざまな領域で作戦や能力を行うわけですが、それが切れ目なく緊密に連携させる、連携させられる、連携していく、このことが重要であると申し上げているわけであって、指揮統制が一体化するとか、相手の指揮統制の下に入るとか、そういったことを申し上げているわけではありません。

 いずれにせよ連携を深めながらも、わが国の行動が、わが国の憲法をはじめとする平和国家としての枠組みの外にはずれるということはあってはならないわけでありますし、それをしっかりと最後をグリップするのが日本国の総理大臣の責任であると考えています。

志位 米国防総省が進めている指揮統制のシステムに、自衛隊を統合し、日本の主権までアメリカに差し出す――こうした方向に進むことを日米首脳会談で合意してきたのではないか

首相 米国が進めている指揮統制のシステムの評価を言うことはできない

志位 自衛隊は事実上、米軍の指揮下に置かれる。まぎれもない憲法違反、国の独立をかなぐり捨てるもの

 志位 指揮統制がどうなるか、一体化するわけではないということを繰り返すわけですが、この米軍文書は非常に明瞭に書いています。

 「シームレスな統合」とは、米国の国防総省が進めている「統合全領域指揮統制」――JADC2というシステムに、インド太平洋地域のすべての同盟国を組み込むものだとのべられています。

 「統合全領域指揮統制」とは、陸海空、宇宙、サイバー、電磁波などすべての領域の情報を一元的に統合し、「攻撃すべき目標」と「最適な攻撃手段」を迅速に決定する指揮統制のシステムです。

 そしてこの米軍文書は、広大なインド太平洋地域においては、域内のすべての同盟国をこの「統合全領域指揮統制」システムに組み込む必要があるとはっきりのべています。

 さらに重大なことは、そのためには同盟国に「主権の一部を切り離させる……政府をあげてのアプローチが必要だ」とまではっきりと明記しています。

 総理、これが米軍の言う「シームレスな統合」ですよ。米国防総省が進めている指揮統制のシステムに、文字通り自衛隊を統合し、日本の主権までアメリカに差し出す――こうした方向に進むことを日米首脳会談であなたは合意してきたんじゃないですか。そういう自覚がありますか。

 首相 JADC2についてご指摘がありましたが、米国務省が作戦環境について共通理解を得る観点から、ミッションパートナーとの間で指揮統制システムとの統合が理想であると述べているものの、このJADC2について、これは統合を目的として開発したものであるとは承知しておりませんし、具体的な内容、これは明らかになっておりません。この評価について申し上げることはできませんが、いずれにせよ、この日本として、この主権国家として安全保障を考えた場合に、日本のこの平和憲法、この外側にはみ出るなどということは、決してあってはならないと思っていますし、それをしっかりと管理することこそ、政府の大きな責任であると考えています。

 志位 米国の側は、「統合全領域指揮統制」システムに、すべての同盟国を組み込むんだとはっきり言っている。

 きょう、私は、(首相は)「自衛隊は独立した指揮系統」というか、その保障はあるのかと、何度も聞きました。あなたは一つの保障も示せなかった。建前を言っただけであります。自衛隊は事実上、米軍の指揮下に置かれることになります。そして、これはまぎれもない憲法違反であります。そして、日本の国の独立をかなぐり捨てるものです。

志位 「東アジア平和提言」の真剣な検討を求める

 志位 いま日本が進むべき道は、軍事的対応の強化の道ではなく、東アジアの平和を構築するための憲法9条を生かした平和外交にこそあります。日本共産党は17日、「東アジア平和提言」をまとまって明らかにしました。総理にお渡ししたいと思いますので、ぜひ真剣に検討いただくことを求めて終わりたいと思います。


pageup