2024年4月24日(水)
主張
止まらぬ異常円安
アベノミクスからの決別こそ
異常な円安が止まりません。34年ぶりの水準となる、1ドル=154円台が続いています。
円安ドル高は、ドルで売る商品の値段が高くなるので、トヨタ自動車などの輸出大企業は大もうけを続け、ためこんだ内部留保は過去最高となっています。
円安によって、外国から見ると、日本の株式は相対的に安くなるので、投資が増え、日本の株高につながっています。
ところが、下請け中小企業にとって円安は、原材料や燃料の値上げと、弊害ばかりです。日本に住む人にとっても、円安は輸入に頼る食料品や燃料の値上げで大変です。
逆に外国に住む人の側から見ると、日本の製品は相対的に安くなり、観光客が多くつめかける「オーバーツーリズム」とよばれる現象まで起きています。
■金融の量的緩和
円安の主要な原因は、アベノミクスの「第一の矢」として行われた「異次元の金融緩和」です。
日本銀行が国債買い入れにより、市場に資金を大量に供給することで金利を引き下げました。民間金融機関が日銀に預けている当座預金の一部からお金を徴収する「マイナス金利」政策まで導入しました。
超低金利政策によって、預貯金の利子はほとんどゼロになりました。通常の金利水準であれば、庶民が得るはずだった利子金額の合計はばく大です。日本の家計の預貯金は、1012兆円なので、これに利子がつけば、1%あたりおよそ10兆円になります。
アメリカのドルなどの金利が日本の金利よりも高ければ、日本の円は売られ、ドルなどは買われるので、円安は進行します。
最近では、欧米諸国がのきなみインフレ対策として金利を上げています。アメリカの政策金利は上限5・5%になっており、円の上限0・1%との金利差がますます開いたことで異常な円安が進みました。
日銀は、3月19日の金融政策決定会合で、「マイナス金利」政策などの解除を決めましたが、植田和男日銀総裁は「当面、緩和的な金融環境が継続する」として、日銀の国債の買い入れによる大量の資金供給を継続することを表明しています。
円の金利上昇が予測されれば、通常は円高に動くはずですが、国民を物価高で苦しめている円安は止まっていません。
日銀が、お金を預ける側が利子を払うという「マイナス金利」などの異常なやり方をやめただけで、国債を大量に買い続ける「異次元の金融緩和」をやめたわけではないからです。
今の異常な円安とそれにともなう物価高は、金融頼みのアベノミクス継続の弊害です。
■実体経済立て直し
引き続く物価上昇のもと、実質賃金は、過去最長とならぶ23カ月連続の減少となりました。
国民を苦しめる異常な円安から抜け出すためにも、金融頼みの経済政策から実体経済を立て直す政策へ転換することが急務です。
中小企業の賃上げへの直接支援とともに、最低賃金を時給1500円に引き上げることなどアベノミクスからの抜本的な転換が必要です。