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2024年4月19日(金)

岸田首相に対する志位議長の代表質問

衆院本会議

 日本共産党の志位和夫議長が18日の衆院本会議で行った岸田文雄首相に対する代表質問は次の通りです。


 私は、日本共産党を代表して、日米首脳会談について、総理に質問します。

「70年来の政策の隅々に手を入れ、根底から覆した」――この評価をどう受け止めるか

 エマニュエル駐日米大使は、総理を米国に国賓待遇で招待した意義について、「産経」のインタビューでこう述べています。

 「岸田政権は2年間で、70年来の(日本の安全保障)政策の隅々に手を入れ、根底から覆した。防衛費のGDP(国内総生産)比2%への増額、反撃能力(敵基地攻撃能力)保有、そのための(米国製トマホークの)購入に踏み切った。防衛装備品の輸出にもめどをつけた」

 「70年来の政策の隅々に手を入れ、根底から覆した」――私は、米国大使のこの評価はズバリ真実を語っていると考えますが、総理は、どう受け止めますか。

 総理、あなたがやってきたことは、歴代政権が憲法にもとづく「平和国家」の理念としてきたことを、ことごとく、「根底から覆した」ものではありませんか。

米軍と自衛隊の指揮統制のかつてない連携強化――その問題点をただす

 今回の日米首脳会談の最大の問題点は、バイデン大統領が共同記者会見で「日米同盟が始まって以来、最も重要なアップグレード」とのべたように、米軍と自衛隊の指揮統制のかつてない連携強化に踏み込んだことにあります。

 日米共同声明は、「我々は、作戦及び能力のシームレスな統合を可能にし、平時及び有事における自衛隊と米軍との間の相互運用性及び計画策定の強化を可能にするため、二国間でそれぞれの指揮・統制の枠組みを向上させる」と明記しています。そこで聞きます。

 ここでいう「シームレスな統合」とは何か。米軍と自衛隊の「統合」を意味することは文意から明らかではありませんか。

 政府は、「自衛隊は独立した指揮系統で行動する」と説明していますが、「独立した指揮系統」でなければならない理由をお答えいただきたい。米軍の指揮下に入ることは、日本国憲法のもとでは許されないということですか。答弁を求めます。

 問題は、米軍と自衛隊の指揮統制の連携強化のもとで、自衛隊が「独立した指揮系統」で活動する保障がどこにあるのかということです。

 安保3文書にもとづいて、政府は、敵基地攻撃能力保有、統合防空ミサイル防衛(IAMD)を進めていますが、その実施のためには、米軍との間で、攻撃目標の情報の共有、攻撃目標の分担、攻撃の成果についての評価の共有などが必要となり、指揮統制の緊密な協力が不可欠になると考えますがいかがですか。日米首脳会談で合意された指揮統制の連携強化はそのためのものではありませんか。そして、この道を進めば、指揮統制は、情報でも、装備でも、圧倒的に優越的な立場にある米軍主導で行われ、自衛隊は事実上、米軍の指揮統制のもとに置かれることになることは明瞭ではありませんか。

 さらに米軍はIAMDの基本方針に先制攻撃を明記しています。米国が国連憲章に違反する先制攻撃の戦争にのりだしたさいに、米軍の事実上の指揮統制のもとで自衛隊が参戦する道を開くことになるではありませんか。

 日本共産党は日米軍事同盟の文字通りの歴史的大変質に断固抗議し、その中止を強く求めるものです。

軍需産業の面での日米統合――「平和国家の理念」を投げ捨てるものではないか

 日米共同声明は、総理が、殺傷兵器の輸出解禁を決定したことを歓迎し、軍需産業でも日米を統合する協議体を開催し、ミサイルの共同開発・生産などを行うとしています。

 これは、武器輸出を「国是」として全面禁止した「武器輸出三原則」が根本理念としてきた「国際紛争の助長を回避する」という「平和国家の理念」を根底から投げ捨てるものではありませんか。米国従属のもとでの「死の商人国家」への道を歯止めなく進むことは、絶対に許されるものではありません。

沖縄県民の民意無視、米軍基地の不安に無関心――あまりに卑屈な従属姿勢ではないか

 日米共同声明は、沖縄県辺野古新基地建設の強行を宣言するとともに、事故原因が不明なままでのオスプレイの飛行再開、全国の米軍基地周辺での有機フッ素化合物(PFAS)汚染には一言もありません。

 沖縄県民の民意を無視し、日本国民の米軍基地にかかわる不安には無関心。あまりに卑屈な従属姿勢ではありませんか。

「AUKUS」への協力検討――軍事的対抗の悪循環を加速するものではないか

 日米共同声明が、米英豪による軍事的な排他的枠組みである「AUKUS」と日本が先端軍事技術での協力検討を行うことを明記したことも重大です。日米が、中国を対象にこうした対応をとれば、東アジアでの軍事的分断と対抗の悪循環を加速することになるのではありませんか。

「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)支持と矛盾――9条を生かした平和外交こそ

 日米共同声明には、「ASEAN(東南アジア諸国連合)インド太平洋構想」(AOIP)への支持も明記されました。AOIPは「対抗でなく対話と協力のインド太平洋」をめざし、あれこれの国を排除するのでなく、地域のすべての国を包摂する東アジアサミットを活用・発展させ、東アジアを戦争の心配のない平和な地域にするという構想であります。この構想への支持と「AUKUS」への参加検討は真っ向から矛盾すると考えませんか。お答えいただきたい。

 いま日本が進むべきは軍事的対抗の強化でなく、ASEANと協力して東アジアに平和を創出する憲法9条を生かした平和外交にこそあることを強調して、質問を終わります。


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