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2024年4月9日(火)

主張

うるま訓練場計画

県民総意に従い政府は断念を

 「閑静な住宅地に基地はいらない」「地元に一言もなく進めるな」―。昨年12月、沖縄県うるま市石川のゴルフ場跡地に陸上自衛隊の訓練場を造る計画が突如持ち上がったことに、地元から怒りの声が沸き起こっています。3月には県議会が白紙撤回を求める意見書を全会一致で可決するなど、計画反対が党派を超えた県民の総意になっています。

 岸田文雄政権は市民・県民の声に押され、跡地の利用のあり方を改めて検討するとしつつ、白紙撤回は拒否しています。運動と世論を一層強め、計画断念に追い込むことが必要です。

■日常の暮らし無視

 岸田政権は、今年度予算に陸自訓練場の新設のためゴルフ場跡地20ヘクタールの取得費を計上しています。

 跡地の前には静かな住宅地が広がります。年間4万人もの子どもたちが自然学習や宿泊体験などで利用する県立石川青少年の家も隣接しています。青少年の家の宿泊棟と予定地の距離はわずか60メートルです。近くの石川岳は豊かな自然に触れられる場として、県民に親しまれています。誰がみても自衛隊の訓練場にはふさわしくありません。

 防衛省は、沖縄の陸自第15旅団(約2000人)に数百人規模の普通科連隊1個を新たに加え、より規模の大きい師団に改編する予定で、それに伴い訓練の必要が増えることを訓練場新設の理由にしています。第15旅団の師団への改編は、岸田政権が決めた安保3文書に「南西地域での防衛体制を強化する」ためとして盛り込まれました。

 防衛省は当初、ヘリの離着陸、空包射撃、ミサイル部隊の発射機展開などの訓練を想定していました。「周辺への影響が最小限となるよう検討」したといいますが、ヘリのごう音や空砲音が周囲に響き渡るのは明らかです。周辺住民への影響は眼中になかったと言わざるを得ません。

 これは、安保3文書に基づく大軍拡が市民の日常の暮らしの安心・安全を無視して進められていることを象徴的に示すものです。

 住民の怒りの前に防衛省は、ヘリの飛行は緊急時に限る、空包は使わないと態度を変え、米軍の使用は想定しないとしていますが、部隊の展開訓練や夜間訓練は行うとしています。住民は「訓練がエスカレートするのは目に見えている」と不信を募らせています。

■反対の声は全県に

 昨年12月にメディアが計画を報じるまで地元住民らには寝耳に水だったことも、怒りに火を注ぎました。

 反対の声はたちまち広がり、地元石川の旭区を皮切りに市内63の全自治会が反対の意思を示し、うるま市議会が計画断念を求める意見書を全会一致で可決しました。市町村合併で2005年にうるま市が誕生して以来初めてとされる大規模な市民集会(1200人が参加)も開かれ、計画断念を訴えました。中村正人市長や玉城デニー知事も白紙撤回を求めています。

 うるま市石川には、1959年に米軍機が墜落し児童と住民の18人が死亡した宮森小学校があります。事故の体験者や遺族が今も暮らし、「基地ができれば悲劇は繰り返される」との思いを抱いています。岸田政権は計画を白紙撤回し土地の取得を断念すべきです。


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