2024年4月3日(水)
米新戦略 同盟国の軍需産業統合
経済秘密保護法にも影響か
米国防総省は今年1月、自国の軍需産業強化と併せて、同盟国の軍需産業を米戦略に統合することを掲げた「国家防衛産業戦略(NDIS)」を発表しました。軍需産業に特化した戦略は初めて。日本の軍需産業が米戦略に深く組み込まれれば、民間人が米国の機密情報に接する機会が増えることになります。国会で審議されている経済秘密保護法案の背景とも言えます。
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NDISは、米国が同盟国・同志国の力を総結集して中国やロシアに対抗する「統合抑止」戦略に言及し、「同盟国やパートナー国の強固な防衛産業は、米国防総省の統合抑止の礎石であり続ける」と指摘。地球規模の武器供給網(サプライチェーン)や整備拠点の確保が死活的だとして、同盟国との2国間・多国間の共同生産や維持・整備網の構築を掲げています。
米国防総省は3月10~20日にかけて日本など各国を訪問し、装備品の整備や修理などのネットワーク構築を協議。米政府は既に、日本に配備している米艦船の整備を恒常的に民間委託するための枠組みづくりに着手しています。
さらに同戦略は、「科学技術を共有するための同盟強化」に言及。情報共有のための協定の締結を挙げています。日米は既に軍事技術に関する多くの協定を締結していますが、今後、極超音速兵器を迎撃する滑空段階迎撃用誘導弾(GPI)の開発を巡る協定などが追加される見通しです。また、キャンベル米国務副長官は、4月10日の日米首脳会談で米英豪の軍事的枠組み「AUKUS(オーカス)」と日本の技術協力が議題になるとの見通しを示しています。
防衛省のシンクタンク・防衛研究所(NIDS)は「米国との安全保障分野の連携に我が国の民間企業を参画させる際に無視できないのが、セキュリティークリアランス(適性評価)制度の問題である。同制度の実現に向けて法案(経済秘密保護法案)の提出が目指されているが、防衛産業連携のいわば『共通言語』である同制度の確立と確実な普及は依然急務である」(『NIDSコメンタリー』298号)と述べています。