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2024年3月29日(金)

きょうの潮流

 人生の最終章に「ちゃんと生きた」と胸を張れたら、どんなにすばらしいでしょう。映画「かづゑ的」を見ながら思いました。ハンセン病回復者・宮崎かづゑさん(96)のドキュメンタリーです▼スクリーン越しに、かづゑさんに会ったのは、ドキュメンタリー映画「天のしずく 辰巳芳子“いのちのスープ”」以来です。がんを患った親友のために、辰巳さんの料理番組で覚えたポタージュを毎日作り届けたエピソードが印象的でした▼かづゑさんの両手は病気の後遺症で指がありません。丸いこぶしで料理をし夫のセーターを編みます。パソコンのキーボードをたたき、80代で2冊の本も出しました。「できるんよ、やろうと思ったら」の言葉が力強い▼ハンセン病を「らい病」と呼ぶのも、かづゑさん的です。「らい患者はただの人間、ただの生涯を歩んできた。らいだけで人間性は消えない。心は病んでません」。そこには、らいを全身で受け止め、逃げないで生きてきた自負が宿っています▼10歳で故郷を離れて瀬戸内海に位置する国立ハンセン病療養所・長島愛生園に入園したかづゑさん。戦争中は健康そうな子ほど作業に酷使され、大人になれなかったと著書『長い道』で述懐しています。かづゑさんも右足を切断手術し、義足に。過酷な少女時代を支えたのは母の愛と膨大な読書量でした▼長島愛生園など瀬戸内海の三つの療養所を世界遺産に登録しよう、という運動があります。大人になれなかった子どもたちも含め、生きた証しです。


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