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2024年2月10日(土)

震災と言葉で苦悩

被災地の技能実習生 減収で「生活が大変」

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(写真)「地震は本当に怖かった」と話す(右から)李桂香さん、イエンさん、トウオンさん=2日、石川県七尾市(佐藤研二撮影)

 能登半島地震の被災地取材では、多くの外国人技能実習生が震災の被害に加え、言葉の壁に苦しむ姿を何度も目にしました。中国の吉林省出身の李桂香さん(49)もその一人です。

 岸壁が激しく陥没した石川県七尾市の石崎漁港。近くの一軒家の前で、大きなプラスチックの箱からバケツに水を移している女性がいました。李さんです。

 声をかけると、李さんはたどたどしい日本語で答えてくれました。記者に言いたいことが伝わらないことに歯がゆそうな李さん。同行したカメラマンの佐藤研二記者が中国語で語りかけると、表情がパッと明るくなりました。涙ぐんで手を合わせて喜びます。

 李さんが移していたのは、漁港からくんできた海水でした。使った食器の汚れを、海水で予備洗いするのだといいます。本洗いは、近所からくんできた地下水でします。トイレはためた雨水。飲料水には避難物資で配られる水を使っています。

 李さんは来日して9カ月。外国人技能実習生として、ナマコやバイガイ、魚の加工をしています。週5日、午前5時から午後1時まで。

 地震は「本当に怖かった」といいます。津波から避難して、1時間後に戻ってきたところ、一軒家にはまだ腰の高さまで海水が押し寄せていたといいます。

 李さんは、ベトナムから来た外国人技能実習生2人と一軒家で共同生活しています。トウオンさん(36)=来日2カ月=とイエンさん(26)=同1年=です。

 イエンさんは「怖かった」。トウオンさんも「ベトナムは地震がない。怖かった」と語ります。記者に「ベトナム語、できる?」と尋ねる2人。「ごめんね」というと、がっかりした表情を見せました。

 困ったことを尋ねると、トウオンさんは「生活が大変」といいます。李さんは「地震の前は残業が月15~20時間あって月収13万円だった。地震で残業無くなって、中国で稼ぐのと変わらない」といいます。イエンさんも「残業が無くなった」と困った様子で語ります。

 記者は、石川県志賀町でもベトナム人男性の外国人技能実習生が、十分な情報が与えられないまま、避難所と寮のアパートを行き来する姿をみました。こうした外国人技能実習生に急いで支援をすることが求められています。(矢野昌弘)


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