2024年2月10日(土)
主張
麻生氏暴言と自民
女性差別ただせない体質深刻
容姿や年齢を揶揄(やゆ)し笑いのタネにするという人権意識の欠如、しかも、そうした“評価”にさらされるのはもっぱら女性だという現状―人権後進国と言われ、遅れた日本のジェンダー状況をただすために、政治は責任を果たさなければなりません。岸田文雄首相や自民党は、差別や蔑視は許されないことを国民にはっきり示す必要があります。
「不適切」と認めぬ首相
自民党の麻生太郎副総裁は1月28日の講演会で、上川陽子外相について「そんなに美しい方とは言わんけれども」「俺たちから見てても、このおばさんやるねえと思った」などと性差別発言をしました。野党や国民の厳しい批判を受け2日、「表現に不適切な点があったことは否めず」として撤回しましたが謝罪はしていません。岸田首相は5日の衆院予算委員会で、発言自体が不適切だと明言するよう求められましたが、言を左右にして応じませんでした。
麻生発言の根底には、女性は若く美しくあってこそ価値があるという考え方があります。「俺たちから見てても」という言葉には、評価するのは、これまで政治権力を握ってきた男性政治家だという上からの目線があります。女性は能力が劣るという意識も前提になっています。
麻生氏はこれまでも、「セクハラ罪という罪はない」とか、少子化問題で「子どもを産まなかったほうが問題だ」などの暴言をしてきました。ロシアのウクライナ侵略に触れる中で「子どもの時にいじめられた子はどんな子だった。弱い子がいじめられる」とか、改憲の問題で「(ナチスの)手口に学んだらどうか」など、人権意識のなさがあらわです。国際社会に通用しないもので、政治家の資格はありません。ところが、これらは“麻生節”などとされ、自民党内でまかり通ってきました。
こうした暴言は麻生氏にとどまりません。自民党の杉田水脈衆院議員は2018年、月刊誌に、LGBTカップルは「『生産性』がない」と寄稿しています。20年には党内の会合で、女性への暴力や性犯罪に関し「女性はいくらでもうそをつけますから」という、被害者の人権を侵害し傷つける発言をしましたが、まともな処分も受けず、重用さえされてきました。いまも自民党内に隠然たる力を持つといわれる森喜朗元首相も、「子どもを一人もつくらない女性の面倒を、税金でみなさいというのはおかしい」「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」などの暴言にこと欠きません。一政治家の問題ではなく、こうした発言を許してきた自民党の体質そのものが問題です。
立ち遅れ著しい政治分野
麻生氏が、講演会で今回のような発言をしたのは、それで笑いがとれると思っていたからでしょう。実際、その場では聴衆から笑いが起きたといいます。自民党内から副総裁辞任を求める声すら出ないのは異常です。上川外相も「どのような声もありがたく受け止めている」としています。なぜ、毅然(きぜん)と抗議しないのでしょうか。
日本のジェンダーギャップ指数は146カ国中125位(23年)と立ち遅れ、中でも政治参画分野が足を引っ張っています。自民党の根深い女性蔑視観が厳しく問われています。