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2024年2月9日(金)

主張

香港の人権状況

さらなる弾圧法制定を許すな

 香港政府が、国家に対する「反逆」などを取り締まる「国家安全条例」の制定手続きを行っています。中国が主導して2020年に制定された香港国家安全維持法(国安法)のもとで「一国二制度」はほごにされ、香港市民は言論の自由も、自由な選挙の権利も奪われています。中国政府、香港政府に対する批判を禁じた条例を香港独自に制定することで、市民にさらに沈黙を強いる企てです。

言論での政府批判を処罰

 1月30日に香港政府が国家安全条例について説明した文書を発表しました。2月末までに市民から意見を公募し、立法会(議会)に条例草案を提出するといいます。言論による政府批判が、国安法によって重大な犯罪として禁じられているもとでは、市民の自由な意見表明などできません。

 この文書では、禁止行為として、反逆、国家分裂、反乱の扇動、国家機密を盗むこと、外国組織と連携した政治活動などを列挙しました。国安法と同じく、政府や司法当局の恣意(しい)的判断で、市民の政府批判を犯罪として弾圧することが可能です。

 条例制定の理由としているのは、民主化運動の高まりです。14年の大規模デモ、19年の逃亡犯条例改定反対運動を「国家の安全を脅かした」と敵視し、取り締まりの必要性を強調しました。

 制定の法的根拠となっているのは、香港の地位を定めた香港基本法の第23条です。国家への反逆などを禁止する法律を香港自ら定めなければならないと規定しています。しかし、基本法は、香港に「高度の自治権」を保障し、一国二制度を明記しています。親中国の香港政府はこれまでも国家安全条例を制定しようとしたことがありますが、市民の反対運動によって阻まれてきました。

 警察出身の香港政府トップ、李家超行政長官は23年12月、北京を訪問し、習近平国家主席に国家安全条例を24年中に制定すると約束しました。国安法によって民主化運動が窒息状態にされたもとでの、民意に反した条例制定です。

 香港警察によると、23年末までに国安法違反容疑で290人が逮捕されました。無許可集会への参加など、国安法以外の法律で逮捕、起訴された市民も多数にのぼります。周庭さんら海外に逃れた民主活動家は指名手配され、帰国すれば逮捕されます。

 昨年行われた区議会議員選挙では、当局による候補者資格審査が導入されて民主派は立候補できず、親中派が議席をほぼ独占しました。投票率は過去最低の27・5%でした。多くの市民が棄権して、抗議の意思を示しました。

国際的取り決めを守れ

 人権と基本的自由を抑圧する法規を何重にも設けることは、一国二制度の蹂躙(じゅうりん)であり、人権に関する国際取り決めに反しています。

 世界人権宣言、国際人権規約の自由権規約は「表現の自由」「集会および結社の自由」や、自由な選挙を通じて政治に参与する権利を定めています。ウィーン宣言は「すべての人権および基本的自由の促進および保護は、政治的、経済的、文化的体制のいかんを問わず、国の義務である」と明記しています。いずれも中国政府が参加、署名しています。

 香港の人権弾圧を内政干渉として拒否することは通用しません。


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