しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2024年2月7日(水)

主張

米軍の中東空爆

国連憲章無視した攻撃やめよ

 米中央軍は、ヨルダンの米軍施設で米兵3人が死亡した無人機攻撃への報復として、2日、イラクとシリア領内にある親イラン武装組織の拠点を空爆しました。イラク政府は、あからさまな主権侵害だと批判しました。3日には米英軍がイエメンの反政府武装組織フーシ派の拠点をまたもミサイルなどで攻撃しました。どんな理由があっても、他国領土に軍事攻撃をかける権利は米軍にありません。

ガザ無差別攻撃が背景に

 2日の攻撃で米軍はイラン革命防衛隊の関連施設など85カ所以上を空爆しました。民間人を含め45人が死亡したとされます。イラクは「主権侵害であり、イラクと地域を悲惨な結末に導きかねない」(軍報道官)と非難し、米国代理大使に抗議しました。

 他国の武装組織を政治的軍事的に支援するイランの行動は武力紛争を各地に広げる危険なものです。公海上で民間船舶を狙うフーシ派の攻撃は犯罪行為です。こうした問題は国際法のルールに基づいて解決されるべきです。

 イラク、シリア、イエメンは主権国家です。国連憲章と国際法は、各国の主権と領土保全の尊重を定め、国際紛争は平和的手段で解決しなければならないと定めています。米軍の攻撃はこれに真っ向から反するものです。

 米軍の攻撃によって、軍事対決は深刻化の一途をたどっています。フーシ派は「エスカレーションにはエスカレーションで応じる」との声明を発表しました。

 イランは「米国が冒険的行為を続ければ、平和と安全の脅威になる」と警告しました。世界最大の軍事力を持つ米国と、中東の大国であるイランの軍事対立は、地域全体を不安定化させかねません。双方に自制が求められます。

 事態の背景となっているのが、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの無差別攻撃です。イスラエルの攻撃によって中東各地で緊張が高まり、親イラン武装勢力やフーシ派はガザのイスラム組織ハマス支持を掲げ、軍事行動を強めています。米国が軍事的報復を繰り返しても、暴力の連鎖が限りなく続くだけです。

 米国は、長年イスラエルを支え、ガザ攻撃にあたっても、イスラエルを支持し、即時停戦を求める国連安全保障理事会決議案に拒否権を行使しました。

 国際社会ではイスラエルに停戦を迫る動きが強まっています。国連総会は昨年10月の緊急特別会合で、人道的休戦を求める決議を採択しました。国際司法裁判所(ICJ)は1月26日、イスラエルに対して、ガザ地区でのジェノサイドを防止するためすべての手段を尽くすことを命じました。

イスラエルに停戦求めよ

 イスラエルはICJの決定に強く反発し、決定の受け入れを拒んでいます。しかし、イスラエルがガザ攻撃をやめなければ、暴力の連鎖が中東の他の地域に広がる危険性はなくなりません。イスラエルにとっても、平和や安全は保障されません。

 イスラエルは国連総会決議やICJの決定を受け入れ、直ちにガザ攻撃をやめ、停戦に応じるべきです。米国に求められるのは、イスラエルへの加担でなく、国際社会の声に従って、イスラエルに働きかけ、停戦に向けた本格的努力に乗り出すことです。


pageup