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2024年1月25日(木)

主張

ライドシェア解禁

公共交通への信頼損なわれる

 岸田文雄政権は昨年12月、デジタル行財政改革会議の「中間とりまとめ」と規制改革推進会議の中間答申で、地域を限るなどの条件付きでライドシェアを今年4月から一部解禁する方針を打ち出しました。自動車の第2種運転免許を持たない一般の運転者が、自家用車を使って有償で乗客を運ぶ事業です。公共交通への国民の信頼が損なわれます。

ルールづくりは後回し

 海外で実施されたライドシェアは、性被害や殺人事件などの犯罪が多発していることや、事故時の責任と補償がライドシェア事業者ではなく一般運転者個人が負うなどの問題がありました。このため日本では導入されていません。一度導入した欧州連合(EU)では欧州司法裁判所が禁止しました。

 ライドシェアとタクシーとの間で運賃の引き下げ競争が起き、タクシー業への圧迫、運転者の賃金や労働環境のさらなる悪化が懸念されたことも、日本で導入を許さなかった理由です。

 ライドシェア一部解禁でも、これらの懸念は解決しません。海外では、米企業ウーバーのようなプラットフォーム事業者(インターネット上で事業の場を提供する企業)が行っていることが問題になっています。これに対し、岸田政権は、タクシー事業者が運送主体になるから、運行の安全や車両の整備は担保されると説明します。

 タクシーを含めて旅客運送事業は、運転者の健康管理、乗務前後の点呼等による過労・飲酒運転の防止、苦情や事故の処理など、運行の安全を確保するためのさまざまな事柄が、運転者の2種免許取得と一体で法律上、義務づけられています。車両整備についても、日常点検・定期点検、故障事故への対応が定められています。

 ライドシェアの運行管理や車両整備について、政府は「検討中」として明確にしていません。ライドシェア運転者の賃金や処遇、適用される労働法制なども定まっていません。導入ありきで最も大切なことを後回しにしています。

 政府方針を受けて10日、東京ハイヤー・タクシー協会の川鍋一朗会長は、「タクシー会社による『日本型ライドシェア』を4月から開始」と発表しました。アプリを使った配車のみで、地域、時期、時間帯を限定するなど、政府が示した方向性を踏まえた内容となっています。一方、業界内で、「地域の公共交通が破壊される」(京都府タクシー協会)、「(ライドシェアの自家用車の)車両整備や事故対応など会社の責任が増す」(鹿児島県タクシー協会)など、危機感や懸念を示す声が上がっています。

移動の権利保障へ責任を

 「中間とりまとめ」は「タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことを位置付ける法律制度について、2024年6月に向けて議論を進めていく」としています。4月実施のライドシェアを“お試し”として、ウーバーなどIT関連大企業に本格的に旅客運送事業を開放し、新たなもうけ口を提供することが狙いです。

 今求められているのは、国民の移動の権利を確立し、それを保障する国の責務を明確にすることです。そのために必要な法律を制定し、財源を確保しなければなりません。タクシー労働者の賃上げや処遇改善を行い、運転者を増やすことにも責任を果たすべきです。


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