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2024年1月22日(月)

主張

差し押さえの増加

社会保険料の軽減・納付猶予を

 厚生年金など社会保険料の納付が滞ったため、無理な取り立てにあったり、資産を差し押さえられたりする企業が増えています。日本年金機構が、コロナ禍での納付猶予期間が終了したとして徴収強化の方針を打ち出したためです。「分納をお願いしたが聞いてもらえず『会社がつぶれようが関係ない』と全額納付を迫られた」と悲鳴が上がります。コロナ禍や物価高騰で経営基盤が傷んでいる中小企業の実情を無視した画一的な滞納処分はやめるべきです。

「コロナ特例」が終了し

 中小企業は各地の年金事務所を通じて、従業員の厚生年金保険料や協会けんぽの医療保険料などを納付しています。コロナ禍で収入が減るなどした業者には2020年から「特例猶予」として社会保険料納付を最長2年間猶予してきました。年金事務所は事業者の状況などを踏まえ分納などに積極的に応じてきました。

 ところが、年金機構は特例が終わったとして「徹底して納付を促す」立場に転換しました。中小企業の経営環境は、コロナ後も物価高騰や人手不足などの影響で悪化しています。保険料納付は容易ではありません。その状況の中、差し押さえ数は22年4月~9月で約2・6万社に上り、上半期でみると過去最高を記録しました。

 コロナ禍で売り上げが落ちて社会保険料の支払いが滞った建設業者は、従業員給与に充てる売掛金を差し押さえられました。「首をくくることになる」と訴えても聞き入れません。あまりにひどい対応です。民主商工会とともに年金事務所と粘り強く交渉し、差し押さえの解除と分納を認めさせました。しかし、相談先がなく猶予制度も知らない業者は泣き寝入りするしかありません。

 社会保険料の強制徴収や滞納処分の手続きは、国税徴収法が準用されます。同法は事業継続や生活維持を困難にする恐れがある時、納税者の不利益にならないよう、さまざまな権利を認めています。

 厚生労働省は、厚生年金保険料の納付猶予の取り扱いについて地方厚生局長あてに通知をしています。▽滞納者の実情で納付困難となった場合は、納付猶予や滞納処分の停止などの緩和措置を講じ、滞納者の負担の軽減を図るとともに早期・的確な納付履行を確保する▽事業所から保険料納付について相談があった場合は実情を聴取し、納付方法の相談に丁寧に応じる―と書かれています。

 厚労省や年金機構は、納税緩和措置が活用できることを周知し、売掛金や預金など「生存権的財産」に該当するものは差し押さえないことを現場に徹底すべきです。

中小企業の支援がカギ

 岸田文雄政権は、賃上げを行った企業の税制優遇などを行うと言います。赤字が続く中小企業にはほとんど使えない仕組みです。賃上げに伴う社会保険料負担も重くのしかかります。日本の雇用全体の7割を支える中小企業が、従業員を維持していくためにも社会保険料の負担軽減策が必要です。

 賃上げには、中小企業への支援が不可欠です。大企業がため込んだ510兆円を超える内部留保に時限的に課税を行えば総額10兆円の財源が生まれます。中小企業の賃上げを実現させるためにも、高すぎる社会保険料の引き下げや減免制度の確立がカギです。


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