2024年1月21日(日)
主張
自民3派閥の解散
隠蔽・幕引きの企て通用しない
自民党派閥の政治資金パーティーを巡る裏金事件に国民の怒りが高まる中、最大派閥・安倍派が19日の総会で解散を決定しました。二階派も同日の総会で解散を決めました。岸田文雄首相は18日に岸田派の解散を表明しています。一方、派閥ぐるみの裏金づくりの全容については首相も3派閥の幹部も口をつぐんでいます。不記載は他派閥でもあります。問われているのは、政治資金規正法を踏みにじる行為を長期にわたり温存・拡大させた自民党全体の体質です。派閥の存否は議論のすりかえです。派閥の解散で、重大な違法行為を隠蔽(いんぺい)することは許されません。
追及逃れの常とう手段
裏金事件で検察が認定したパーティー収入の不記載額は3派閥合計で約9億7000万円に上ります。会計責任者ら3人が起訴されたほか、国会議員では1人が逮捕、2人が起訴されるなどしました。裏金の実態を知る立場にある安倍派の歴代事務総長ら主要幹部7人は事情聴取されたものの、立件は見送られ、「トカゲのしっぽ切り」との批判が上がっています。
安倍派と二階派は、検察の刑事処分の結果を受け、それぞれ総会で解散を決めました。しかし、いつ誰がどのような経過で脱法行為を発案したのか、裏金づくりの意図や目的、使途については全く明らかにされませんでした。
安倍派座長の塩谷立元文部科学相は「いつどういう形で始まったのか全く分かっていない」と述べ、「会長が決めてやってきた」などと死去した安倍晋三元首相や細田博之前衆院議長に責任転嫁しました。事務総長経験者らも会見で「把握してなかった」「秘書が報告しなかった」と自身の関与を否定しました。
事務総長だった松野博一前官房長官は、5年間で1000万円以上の不記載があったことは認めつつも、不正や私的な目的の支出はないとしたコメントをホームページで発表しただけです。真摯(しんし)に説明する姿勢はありません。
二階派会長の二階俊博元幹事長は解散決定後の記者会見で「派閥が悪いことをしたわけでも、カネをちょろまかしたわけでもない」と声を荒らげました。二階氏自身の事務所の秘書が多額の不記載で立件されたにもかかわらず、反省のなさはあまりに深刻です。
自民党内では金権腐敗事件が起きるたび、「派閥の弊害」を問題にする議論で盛り上がります。しかし、リクルート事件後の1989年に「派閥解消」を盛り込んだ政治改革大綱を決めても実行されません。94年にも派閥事務所の「閉鎖」などをうたいましたが、形だけでした。「派閥の解消・解散」議論は、金権体質追及の矛先をそらす常とう手段です。企業・団体献金の全面禁止以外に腐敗政治の根を断つことはできません。
首相に政権担う資格ない
岸田政権は閣僚も党役員の主要人事も安倍派に頼り切っていました。組閣に際しても派閥の意向に従い、バランスを保ちながら政権運営を続けてきました。
派閥を温存し、不正・違法を拡大させたことに反省せず、にわかに「脱派閥」を口にしても国民の信頼は得られません。カネにまみれた派閥の実態を全て明らかにすることが首相の責任です。「派閥解散」で疑惑の幕引きを企てる首相に政権を担う資格はありません。








