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2024年1月18日(木)

能登半島1.1地震

カキ業者「海に出られない」

七尾湾の養殖 出荷は絶望的

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(写真)一番の稼ぎ時に襲った大地震。「先のことは考えられない。それでも、頑張って生業を続けるよ」と語る漁師の男性=16日、石川県七尾市

 能登半島地震で水産業も深刻な被害を受けました。石川県の調査によると58港で甚大な被害があり、漁船172隻以上が転覆などの損害を被りました(17日現在)。日本海側で最大のカキ養殖地、七尾湾。有名な「能登かき」が、ほとんど出荷できなくなっています。

 堤防は傾き、海岸沿いの道路全体が何十メートルにもわたって30センチほど陥没しています。

 「まだ海に出る気になれん。海の中のカキがどうなっとるか、まったくわからん」。いまは静かな水面を眺めながら、カキ養殖業者の男性(82)=石川県七尾市=は話します。

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 妻と息子と3人で正月を迎えた1日、地震が大きく家を揺らし、ガラスが割れタンスが倒れました。津波がくるのを目撃し、大津波警報が発令されたのを受けて裏山に近所の人たちと避難。頻発する余震の中、2日間、車中で寒さをしのぎました。その後移った避難所の体育館は床が冷たくガラスも割れているため、いまは自宅で過ごしています。

 自宅前の海べりにあるカキ小屋と船、機械はほとんど被害を免れました。ただ肝心のカキがどうなっているのかわかりません。男性が14台所有するカキ棚は、1台が長さ100メートル、幅2メートルで2万個のカキが養殖できます。

 「周りの業者も、まだ自宅の片付けがあって、海にでかけていない。どうなっているのか皆知らない」。海底に落ちてしまったか、カキをつるすロープがからまってしまったか…。

 東日本大震災では三陸地方のカキが大きな被害をうけたことから、絶望的な事態を想定します。断水のため、収穫できてもカキを洗浄できず、出荷は無理だといいます。

カキ養殖続ける

復活したらまた食べて

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(写真)「地震によって道路が沈下し、カキ小屋へ行くところに30センチほどの段差ができた」と語ります=16日、石川県七尾市

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(写真)幸いにも、漁師の男性が所有する船に大きな被害はありませんでした。「自宅の片付けもこれから。もう少し落ち着いたら、海に出るよ」=16日、石川県七尾市

 「12月から3月にかけて1年分を稼ぐ」というほど今はかき入れ時。今年、「能登かき」の出荷を断念しても来年復旧できるわけではありません。石川県七尾市でカキ養殖をする先の男性は、稚貝が壊滅的だからだといいます。来年稚貝を育て、売り物になるには、さらに1年かかります。

 石川県漁業協同組合の七尾西湾出張所では、組合員のカキ養殖業者40軒の被害について聞き取り調査をしています。全員が共済保険に加入しているわけではなく、資金の乏しい業者は廃業も考えているのではないか、といいます。職員は「行政の支援も求めていくことになるでしょう」と話します。

 男性は、帝国ホテルの有名なシェフから称賛の手紙をもらった自身のカキが誇りです。「1年もののカキは小ぶりだけど味、色がいい」と、その魅力を語ります。後継者がなく困難な状況ですが「死ぬまで続けようと思っとる」と力を込めました。

 「赤旗まつり」にも幾度となく出店しました。「親切な人たちばかりの集まりだった」と顔をほころばせます。「また呼んでください。復活した『能登かき』を食べてほしい」。自分を奮い立たせるような大声を冬の海に響かせました。

 (長谷川正史、前田智也)


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