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2024年1月17日(水)

松竹伸幸氏の除名処分再審査についての報告

副委員長 山下芳生

(1)規律違反で除名処分となった松竹伸幸氏から、第29回党大会に対して除名処分の撤回をもとめる「再審査請求書」が、昨年11月1日付で提出された。

 党規約第55条は「被除名者が処分に不服な場合は、中央委員会および党大会に再審査をもとめることができる」と規定している。

 大会幹部団は、この規定にもとづいて対応を協議し、松竹氏の「再審査請求書」を党大会として受理し、大会幹部団として再審査を行うこととした。除名処分をされた者が大会に除名処分の再審査を求めた例は過去にもあるが、そのさいにも大会幹部団の責任で再審査を行い、その結果を大会に報告するという対応を行っており、今回もこれまでの対応を踏襲することとした。

 以下、審査の内容と結果を報告する。

(2)松竹氏を除名処分とした理由は、処分を決定した京都南地区委員会常任委員会と承認した京都府委員会常任委員会の連名による昨年2月6日付の発表文(以下「除名処分決定文」という)に示されている。結論から言えば、松竹氏の「再審査請求書」は、これまでの松竹氏の主張を繰り返すだけで、「除名処分決定文」がのべている処分理由に対する反論がまったくできないことを特徴としている。

 第一に、「除名処分決定文」は、松竹氏が、昨年1月に出版した本のなかなどで、党規約にもとづく党首選出方法や党運営について、「(党大会が)党内に存在する異論を可視化するようになっていない」、「国民の目から見ると、共産党は異論のない(あるいはそれを許さない)政党だとみなされる」などとのべ、わが党規約が「異論を許さない」ものであるかのように、事実をゆがめて攻撃したことを批判した。

 それに対して、松竹氏は「再審査請求書」のなかで、「私が述べているのは、共産党が異論を許さない政党だということではありません。…党内に異論が存在するのに、それを『可視化するようになっていない』ということです」と弁明している。しかし、松竹氏が繰り返し主張している「党大会が…異論を可視化するようになっていない」という党攻撃の前提自体が事実と異なっている。党内に大きな意見の違いが存在すれば、それは必ず党大会に反映される。1958年の第7回党大会では、党員の多数は綱領草案に賛成だったが、一定数の反対意見も存在し、それが党大会にも反映し、採択が見送られた。また、わが党は、党大会で方針を決める全党討論の過程で、特別の冊子を発行し、全体のなかではごく少数の異論も「可視化」している。今回の党大会に向けてもそうした特別の冊子が発行されている。「除名処分決定文」では、松竹氏が、「異論を可視化するようになっていない」という事実と異なることを根拠にして、わが党規約を「異論を許さない」ものであるかのように攻撃したことを批判しているのである。

 「除名処分決定文」は、「党首公選制」という松竹氏の主張が、「党内に派閥・分派はつくらない」という民主集中制の組織原則と相いれないものであることを批判した。この批判に対し、松竹氏は「再審査請求書」で、「党首公選の実施が分派の形成につながるようなことがあれば、党内に存在する異論を議論するのは公選期間中に止め、通常の時期には拡大しないことです」などとのべ、「党首公選制」が「分派の形成につながる」可能性があることを自ら認めている。わが党が党員の直接選挙によって党指導部を選出するという方法をとっていないのは、それが必然的に多数派形成のための活動――派閥・分派をつくることを奨励することになるからだが、その事実そのものは、松竹氏も認めざるをえないのである。民主集中制を認めながら、「党首公選制」を主張することは、根本的に矛盾した態度である。

 第二に、「除名処分決定文」は、松竹氏が、出版した本のなかなどで、「安保条約堅持」と自衛隊合憲を党の「基本政策」にせよと迫るとともに、党綱領と綱領にもとづく党の安保・自衛隊政策に対して「野党共闘の障害になっている」、「あまりにご都合主義」などと攻撃したことを批判した。

 それに対して、松竹氏は「再審査請求書」のなかで、「安保・自衛隊問題での私の主張は…新綱領には合致する」と主張している。これは綱領に対する無理解にもとづく主張であり、まったく成り立たない。

 松竹氏は、「再審査請求書」のなかで、自衛隊問題について、「政党としての共産党は自衛隊合憲論をとるべきだ」との主張を繰り返している。しかし、わが党の綱領は、「国民の合意で憲法第9条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる」と、自衛隊を憲法違反とし、国民の合意で段階的に解消していく方針をとっている。この方針のもとで、わが党が参加する連合政権ができた場合に、連合政権の対応としては、自衛隊と共存する時期は「自衛隊=合憲」の立場をとるが、日本共産党としては一貫して「自衛隊=違憲」の立場を貫くことを明らかにしている。「政党としての共産党は自衛隊合憲論をとるべきだ」という松竹氏の主張が、綱領と党の方針に反する主張であることは明瞭である。

 松竹氏は、「再審査請求書」のなかでも、日米安保条約について、安保廃棄を、当面の基本政策にしている限り、野党連合政権の障害になるとして、安保容認を「基本政策」にすえるべきとの主張を繰り返している。これが綱領に反する主張であることは明瞭である。

 さらに松竹氏は、「再審査請求書」のなかで、自分の主張を合理化するために、わが党綱領が日米安保条約の段階的解消論に立っていると主張している。しかし、綱領のどこにも日米安保条約を段階的に解消するとの立場はない。わが党は、異常な対米従属を打破していくために、安保法制廃止・立憲主義回復など緊急の諸課題の実現のために安保条約の是非を超えた共同の努力を行うことを重視しているが、それは、安保条約の段階的解消論――安保条約解消のためにはいくつかの中間的段階が必要だという立場では決してない。松竹氏の主張は、綱領をまったく理解していないものというほかない。

 なお松竹氏は、「再審査請求書」で、2000年の党大会で決まった「自衛隊活用論」を、その後、志位委員長は否定し、2015年に突然「復権」させたという主張を繰り返しのべているが、これは事実無根のものである。自衛隊を国民の合意で段階的に解消していく――その過程で急迫不正の主権侵害、大規模災害など必要にせまられた場合に、存在する自衛隊を国民の安全のために活用するという方針は、2000年の第22回大会で党として決定し、その立場は2004年に改定された党綱領にも明記され、党が一貫して訴えてきた立場である。志位委員長は、第22回党大会の報告者として、またその後も党委員長として、2010~12年に行われた『綱領教室』(13年刊行)などでも、この方針を一貫して解明・主張してきており、いったん否定して、その後「復権」させたという松竹氏の主張は、自身の言動を合理化するための根も葉もないつくりごとである。

 第三に、「除名処分決定文」は、松竹氏が、わが党に対して「およそ近代政党とは言い難い『個人独裁』的党運営」などとする攻撃を書き連ねた鈴木元氏の本を、中身を知ったうえで、「同じ時期に出た方が話題になりますよ」と出版を急ぐことを働きかけ、党攻撃のための分派活動を行ったことを批判した。

 それに対して、松竹氏は「再審査請求書」のなかで、「話題を高めて売り上げを伸ばすため」などと弁明しているが、「事実関係については、私は否定するつもりありません」「『同じ時期に出た方が話題になりますよ』と述べ、執筆を早めてもらったことも事実です」と事実関係について認めている。

 松竹氏は「分派を禁止する規定は…現行規約からは外された」と主張している。しかし、党規約第3条は、民主集中制の基本として「党内に派閥・分派はつくらない」と明記している。これが分派の禁止であることは明瞭であり、松竹氏の主張はまったく成り立たない。

 以上、松竹氏の「再審査請求書」を検討したが、「除名処分決定文」のなかで除名理由とされたことについて、まったく反論できないことがその特徴となっている。また松竹氏は、処分の過程には「手続き上の瑕疵(かし)がある」とのべている。しかし、党規約第55条にもとづいて松竹氏に十分に意見表明の機会をあたえるとともに、党規約第5条の「自分にたいして処分の決定がなされる場合には、その会議に出席し、意見をのべることができる」については、処分を決定する会議の日程を松竹氏に伝えたうえに、松竹氏からも繰り返し日程確認の問い合わせがあったが、松竹氏は、会議に出席し、意見をのべる権利を行使しなかった。したがって、処分は党規約にもとづいて適正な手続きで行われており、何ら瑕疵はない。

 大会幹部団は、再審査の結果、松竹氏の除名処分は党規約にもとづいて適正に行われており、「再審査請求書」での松竹氏の主張は、除名処分の理由を覆すものではないことを確認した。そのことを踏まえ、大会幹部団は、松竹伸幸氏による除名処分撤回の請求を却下したことを報告する。

(3)なお、松竹氏は、除名処分が決定された直後から、党大会に処分の再審査を求めることを表明し、党内に同調者を組織する活動を開始した。同調する党員には、「党大会に代議員として出て…除名に反対だという意思を表示してほしい」、「現在の党指導部の方針に反対していたとしても、必ずしも明確に反対すると言わないやり方もある」(7月10日、ブログ)と、本心を隠して党大会代議員になるよう呼びかけた。これらの行為は、党外から、わが党の自律的ルールである党規約を踏みにじって、かく乱を行おうとするものである。

 また、松竹氏は、党大会成功めざす「大運動」での福岡県党の努力に対し、「そんなやり方は結局は自壊(自己崩壊)への道だ」(10月1日、ブログ)などと誹謗(ひぼう)している。党の前進を願う「善意の改革者」どころか、党の変革の事業の妨害者であることも明らかである。

 党規約第4条は、「党の綱領と規約を認める人は党員となることができる」としており、松竹氏が党員の立場を喪失していることは明瞭である。

 以上で、報告を終わる。


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