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2024年1月16日(火)

志賀原発 避難計画「机上の空論」を証明

地図

 能登半島地震は、原子力防災の問題を改めて浮き彫りにしました。北陸電力志賀原発の防災訓練の監視行動を続けている原発問題住民運動石川県連絡センター事務局長の児玉一八氏は、「今回の地震で避難は不可能だという私たちの指摘が実証されてしまった」と話します。

15万人要避難

 石川県志賀町に立地する志賀原発1、2号機は能登半島の中ほどの西岸に位置します。国の原子力災害対策指針に基づいた同県の原子力防災の避難計画では、同原発から30キロ圏の約15万人が、自家用車やバスなどで避難することになっています。

 このうち志賀町の全域は、避難計画の策定が必要な同原発から30キロ以内にあります。原発事故が起きれば、半島北東部の能登町と、金沢市の南西部に位置する白山市に避難することになっています。(地図参照)

 しかし、今回の地震では避難ルートとなっている山間部や沿岸の道路の多くが、土砂崩れなどで通行不能です。15万人のうち約3万人は、今回被害が大きかった珠洲市、輪島市、能登町に避難する計画です。

 地震による原発事故の複合災害では、地震に伴う避難者への対応と同時に、原発防災による避難者を受け入れることになります。

 計画では、原発から5キロ圏内はすぐに避難を開始。5~30キロ圏は屋内退避を前提に、実際の空間放射線量に基づいて避難開始を判断することになっています。

避難判断不能

 しかし、今回の地震で放射線を測定するモニタリングポストのデータが原子力規制委員会で確認できなくなりました。志賀原発の周辺に設置されている116カ所のモニタリングポストのうち、同原発の北に位置する最大18基のデータが一時確認できなくなりました。15日になっても1基で確認できません。

 規制委は、必要な場合は車や航空機を使った放射線量の測定が可能としています。しかし、地震による被害で道路が通行できないことや、航空機も天候に左右されます。

 児玉氏は「空間放射線量の実測値に基づいた避難の判断は、机上の空論だと言ってきたが、それも実証されてしまった。能登半島の地理などの状況を見れば誰でも分かることだが、原子力防災の仕組み自体が実情に合わないことが、今回の地震で証明された」と指摘します。

 また、屋内退避する場合、窓を閉め、換気を止めるなど、放射性物質を含む雲(プルーム)の被害を防ぐとしています。しかし、判明しているだけで県内で全壊はじめ住宅被害が1万9000棟以上(同県まとめ、輪島、珠洲の両市などは「多数」)に上り、退避困難な家屋が多数ありました。

 (松沼環)


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