2024年1月15日(月)
主張
包括的性教育
互いを尊重する関係育てよう
昨年、極めて深刻な子どもへの性暴力が明るみに出ました。旧ジャニーズ事務所の創業者・故ジャニー喜多川氏によって、半世紀にわたり数百人におよぶ子どもへの性加害が行われていました。
受験生を狙った痴漢犯罪が社会問題となり、市民の運動の高まりや日本共産党の申し入れなども受けて、国や自治体が対策を強化するなどの動きもあります。
子どもたちを性暴力の被害者にも加害者にもさせないために、人権・ジェンダー教育としての性教育の推進が待ったなしです。
子どもへの性暴力なくす
内閣府の「こども・若者の性被害」調査(2023年6月)によると、16~24歳の4人に1人以上が何らかの性暴力被害を受けています。性交を伴う被害に遭った人のうち、最初の被害年齢は、中学生以下が24%と深刻です。
子どもへの性暴力は、被害を受けても、それが被害だと分からないことが多いのが特徴です。相談や告発がしにくいため苦しみをより長く深くしています。一般社団法人Springのアンケート(20年)では、被害を認識できるまでに平均で7年程度かかっています。若年層の望まない妊娠・出産につながるケースもあります。
実態を踏まえ、刑法が昨年改正されました。暴行・脅迫要件を撤廃した「不同意性交等罪」の創設、性交同意年齢の13歳から16歳への引き上げ、被害者が未成年者の場合、18歳に達するまでの公訴時効の事実上の停止などです。
改正案を審議した参院法務委員会の参考人質疑では、専門家から「性犯罪、性差別的暴力の根絶は刑法改正だけでは決して実現しない」「包括的性教育が最重要課題」だとする意見が出されました。
包括的性教育とは、「性は人権」「ジェンダー平等」の立場で、互いの性を尊重する人間関係を築くことを目指すものです。具体的な内容は、09年にユネスコ(国連教育科学文化機関)が中心になってまとめ、18年に改訂された「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」に示されています。(1)人間関係(2)価値観、人権、文化、セクシュアリティ(3)ジェンダーの理解(4)暴力と安全確保(5)健康と幸福のためのスキル(6)人間のからだと発達(7)セクシュアリティと性的行動(8)性と生殖に関する健康―の八つの柱があり、年齢層に区分して学習内容が掲げられています。学び手の成長や発達に沿って創意工夫しながら取り組み、子どもの自己肯定感や探求心を育むことを目指しています。
日本の性教育は、明治期の家父長制を美化する勢力などから「行き過ぎ」「過激」などとする攻撃に絶えずさらされてきました。しかし、攻撃の標的にされた都立七生養護学校事件(03年)では、13年の最高裁決定で、都議らの介入を違法とする判断が確定しました。自らの人権と健康を守る上で、からだと性を学ぶ性教育の推進は人権課題であり、子どもの権利を保障するための土台です。
ネットワーク結成に希望
「包括的性教育推進法の制定をめざすネットワーク」が、性教育の実践家、研究者、市民によって昨秋結成されたことは、大きな希望です。日本共産党は性暴力をなくし、互いの性を尊重する人間関係を築くため、科学的な「包括的性教育」が日本社会に根づくよう力を尽くします。








