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2024年1月7日(日)

石川・珠洲ルポ

「助けて」に耳澄ます

 1日に起きた能登半島地震は6日時点で死者126人、行方不明者210人と、日ごと、その深刻な被害が明らかになっています。地震と津波で甚大な被害が出た石川県珠洲市に入りました。(細野晴規、矢野昌弘)


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(写真)津波の被害を受けた住宅に安否確認をする消防隊員=6日、石川県珠洲市(細野晴規撮影)

 「消防です。誰かおられますか。おられたら返事してください」

 1階がつぶれた木造住宅に、滋賀県から派遣された消防隊員たちがいっせいに大きな声で呼びかけます。

 そして、かすかな声も聞き逃すまいと耳を澄まします。それを何度か繰り返すと、隊員たちは隣の住宅へ。

 ここは珠洲市の飯田地区。住宅の白い壁に残った津波の痕跡は、4メートルほどの高さがありました。この地区では、がれきや津波で流された車が道路をふさぎ、至る所が通行止めとなっています。

 近所の女性(72)は、倒壊した家屋に誰が住んでいたかなど、隊員から聞かれていました。女性は「80代の1人暮らしの男性があの家に住んでいたけど、安否不明なの」と不安そうです。

 ところが、1匹の猫を見つけると笑顔に一変。「生存者発見」と飼い猫のスズちゃん(3)と再会しました。「ここで捕れる魚はなんでもおいしい。漁師ががんばって安く魚を提供してきた、燃料高騰でもね。これを機に『もう漁師やめる』と何人も言っていてさびしい」と話します。

 漁港には、転覆した船や、津波で岸壁に打ち上げられた漁船が斜めに傾いていたり、壊れたトラックが海に落ちかけていました。漁船数隻が津波で流されたままになっているといいます。

 男性(72)が営む船舶修理の店の前の道には大量の漁具や金属製の大きな部品が転がっていました。「なんとか仕事用の車はエンジンがかかった。車が通れるようになるだけで、片付けがかなりはかどるのに」と、車道の確保を希望していました。

余震恐怖 家いられない

給油に長蛇の列

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(写真)ガソリンスタンドに並ぶ車列=6日、石川県珠洲市(細野晴規撮影)

 珠洲市役所に近いガソリンスタンドでは6日の午前8時すぎには50台を超える車が給油に並んでいました。給油できるのは1台20リットルまで。

 スタンド店員は「営業時間はわからない。ガソリンが届いたら営業開始で、なくなったら閉店するだけ」といいます。

 給油待ちの軽自動車の男性(70)は妻(70)と地震以降、車中泊をしています。「夕方6時から朝7時まで夜の間中、暖房のためにエンジンをかけている。腰はまだ痛くないけど、残り10リットルぐらいしか残ってない」と話します。

 男性の家は、屋根瓦が一部落ちたぐらいといいます。それでも車中泊なのは「震度7の揺れが怖かった。次にまた来たら、死んでしまう」と1日の地震の怖さを語ります。

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(写真)津波などの被害を受けた沿岸部=6日、石川県珠洲市(細野晴規撮影)

 市役所駐車場で休憩していた女性(62)は夫と2人で日中を車中で過ごし、夜は避難所で寝ます。自宅は津波で1階は散乱し、水浸し。「津波で下水道の水も流れてきたのか、ヘドロのにおいで臭い。他人の乗用車が玄関をふさいでいる」と語ります。

 珠洲市内では6日午前5時すぎにも震度5の大きな余震が発生。震度3の余震も多数起きています。

 女性は「昨年5月の地震以来、食料を備蓄してきたのでまだ余裕がある。やっぱり津波や大きな地震がまた起きないとわかるまでは落ち着かない。生活再建のめどがつけられない」と語りました。


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