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2024年1月5日(金)

断水で健康悪化懸念

石川・羽咋診療所 野口卓夫所長に聞く

 石川県羽咋(はくい)市の石川勤労者医療協会・羽咋診療所(全日本民主医療機関連合会加盟)は3日から診察をしています。1日に発生した能登半島地震の影響はどうなっているのでしょうか。所長の野口卓夫医師(55)に聞きました。(桑野白馬)


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(写真)野口卓夫医師=4日、石川県羽咋市

 年始は、休日当番医だった3日から診察を始めています。この日は、通常の当番医に比べ約3倍にあたる32人が診療に訪れました。避難所から来たという人もいます。インフルエンザA型が11人と最も多く、新型コロナウイルスと診断された人も2人います。

感染症が流行

 感染症が流行しやすい時期と震災が重なっています。避難所の多くは体育館ですが、寒く、床が固い。断水が続き、水洗トイレが使えない。そのためトイレの回数を減らしたい。だから水を飲むのを我慢する人が多いのです。インフルエンザの患者さんには「食欲がなくても、水分はとってね」と声をかけるのですが、被災した患者さんは躊躇(ちゅうちょ)しています。

 インフルエンザなどの患者さんには「安静と十分な睡眠」が回復に必要ですが、避難所は安静にできる環境にありません。避難所は劣悪で、感染症が流行しやすい環境にあります。

我慢しないで

 避難して腰痛になった方もいました。高血圧や糖尿病、ぜんそくを患い日常的に服薬が必要な人が、自宅の被災で「薬が家から取り出せない」と処方を受けに来ました。

 懸念しているのは、足腰が弱かったり、介護を必要としたりするなど医療機関へのアクセスが困難な人たちが震災でより受診が難しくなるのではないかということです。

 この地域では体調が多少悪くても我慢する人が多い。地震で強いストレスを抱えて病状が悪化しているのに、受診を我慢していないか心配です。体調がおかしいなと思ったら、躊躇なく医療機関に相談してください。

 患者さんの中には、揺れる光景を思い出して眠れないと語る人もいます。メンタル面の不調を訴える人が今後増えるでしょう。医療従事者も被災者です。職員の精神的ケアも課題です。私たちも被災者の立場から患者さんに寄り添った対応をしていきます。

 被災者の負担を軽減するためには避難所を、ただ場所を提供するだけでなく、人間の尊厳が守られるようにしてほしいのです。これが政府への要望です。


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