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2024年1月1日(月)

年明けから最低賃金増

米22州で 時給15ドル超も

 【ワシントン=島田峰隆】米国では1日、22州と38の市や郡で最低賃金が引き上げられます。各地方自治体で可決した法律や住民投票の結果を受けた措置です。最賃引き上げを求める運動が当初の目標としてきた時給15ドル(約2100円)を上回る州も目立ち始めています。

 米民間シンクタンク「経済政策研究所」(EPI)のまとめによると、最賃引き上げの対象になる労働者は約1000万人に上ります。そのうち約6割は女性です。また5人に1人が貧困ライン以下の収入です。

 EPIは「最賃引き上げは困窮している労働者や世帯へ不可欠な支援となる」「最低賃金は経済的な公平さを強め、全米の労働者に尊厳のある生活水準を保障する強力な手段であり続けている」と指摘しました。

 22州のうち引き上げ幅が最も大きいのはハワイ州です。現行の時給12ドル(約1700円)が2ドル増の14ドル(約2000円)になります。

 メリーランド州など計3州が新たに時給15ドル以上になります。マサチューセッツ州などすでに実現した4州に続く動きです。さらにデラウェア州やイリノイ州など7州が今後数年間に時給15ドル以上へ引き上げることを決めています。EPIは最賃を15ドル以上に定める動きに「加速化」がみられるとしています。

 米国では2012年秋にニューヨークでファストフード労働者が最賃時給15ドルを求める運動を開始しました。全国組織が発足し、全米規模で行動を続けてきました。

 米民間非営利団体「全米雇用法プロジェクト」(NELP)のヤネット・レイスロップ研究員は、運動開始から10年余りで時給20ドル(約2800円)も視野に入れた最賃引き上げを勝ち取ってきていると指摘。各自治体での引き上げについて「運動が持つ力を示すとともに、高インフレや新型コロナのなかで大幅賃上げが必要だという認識が広がっていることを示すものだ」と強調しました。

 米国の最低賃金 連邦政府だけでなく、州や郡・市など地方自治体も独自に最低賃金を導入することができ、額の高い方が適用されます。連邦政府が定める最低賃金は現在、時給7・25ドル(約1025円)で、2009年以来変わっていません。

ブラジル7% 「経済の好循環」へ

 ブラジル政府は1日から最低賃金を6・97%引き上げました。ルラ大統領は最賃引き上げによって経済の好循環を図り、雇用増につなげていく考えを改めて強調しています。

 27日の政府発表によると、最賃(月額)は現行の1320レアル(約3万8500円)から1412レアル(約4万1200円)に引き上げられます。これにより、最賃額に連動する年金支給額なども増額されます。

 ブラジル憲法は、労働者の購買力を維持するために、インフレ率に応じて最賃を調整することを政府に義務付けています。11月時点のインフレ率は3・85%(前年同月比)でした。今回の引き上げ率は、これを大きく上回るものです。

 政府発表は、右派のボルソナロ前政権は憲法上の規定に「正確に従っただけだった。インフレに合わせて調整しただけで、本当の所得増はなかった」と述べ、経済成長率も加味して決定された今回の引き上げ幅の重要性を指摘しています。

 ルラ大統領は最賃引き上げの大統領令の発表にあたり、「最賃の引き上げは、最賃労働者にとってだけ重要なわけではない」、これにより「お金が回り、商業の売り上げが増え、工業生産が増大する。経済の車輪が再び回り、新たな雇用が生まれる」とコメントしました。


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