2023年12月28日(木)
きょうの潮流
「新聞の朝刊を取ること以外ぜいたくはしていません」。そう書かれた投書が今月中旬、本紙に届きました。名古屋高裁が11月末、生活保護費の引き下げは違法だとする判決を出したニュース記事を読んでのものでした▼「56歳男性」だというこの方は、ここ十数年、認知症の両親の介護をしていたといいます。仕事を探そうにもスマホがない。そう伝えると面接を断られる。今の生活保護費では通信費やスマホ代の捻出が難しい…と悪循環に▼安倍晋三政権が2013年から段階的に引き下げた保護費の減額は総額670億円。過去最大規模でした。高裁判決はこの減額を行った厚生労働相に「重大な過失がある」と▼余裕のない暮らしをしていた原告たちが保護費の減額でさらに余裕のない生活を9年以上強いられたと認定。「相当の精神的苦痛を受けた」として、国家賠償を命じました▼生活保護の基準は、住民税の非課税や最低賃金、社会保障給付水準などさまざまな制度に連動。判決は、国民全体の生活水準に影響を及ぼすものだとも指摘します。「生活保護は最低限の生活のベースラインなので、これを機に国民みんなの生活が豊かになっていってほしい」と原告の一人、澤村彰さん▼29都道府県で起こされた30の同種訴訟。昨年5月の熊本地裁判決以降、12勝4敗と原告勝訴の流れができています。来年こそは生活保護費を削減前の額に戻したい。投書を寄せた男性は「スマホを持って生活の幅を広げられたら」と希望を膨らませます。








