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2023年12月26日(火)

主張

殺傷武器輸出解禁

「死の商人国家」へ変貌許すな

 岸田文雄政権は武器輸出を大幅に緩和するため、「防衛装備移転三原則」と「運用指針」の改定を強行しました(22日)。同時に、改定に基づき、地対空ミサイル・パトリオットの米国への輸出を決めました。憲法の平和主義に背を向け、殺傷能力のある武器の完成品を輸出可能にし、「死の商人国家」へ大きく踏み出すものです。

ライセンス生産品輸出へ

 岸田政権が今回決定した主な改定内容は、次の通りです。

 ▽外国企業から許可を得て日本国内で製造する「ライセンス生産品」をライセンス元の国へ輸出可能にする▽「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5類型に関わる武器の輸出は「本来業務」や「自己防護」に必要なら殺傷武器も搭載できることを明確にする▽「国際法に違反する侵略を受けている国」など「被侵略国」全般に非殺傷武器を輸出できるようにする▽国際共同開発品の部品は第三国への輸出を解禁する―などです。

 このうち、ライセンス生産品は、これまで米国企業がライセンスを持つ武器の部品に限り米国にのみ輸出できたのに対し、今後は部品だけでなく殺傷武器の完成品もライセンス元の国ならどこでも輸出できるようにしました。日本のライセンス生産品は79品目に上り、輸出対象国になるライセンス元の国は米英仏独伊など8カ国に拡大します。

 一方、ライセンス元の国が日本から輸入したライセンス生産品を第三国へ輸出する場合は、ウクライナやイスラエルを念頭に「現に戦闘が行われていると判断される国」は除外するとしました。しかし、「現に戦闘が行われている」という判断基準は曖昧で恣意(しい)的運用の恐れがあります。現に戦闘が行われていなくても、将来、戦闘が起こることもあり得ます。

 また、米国は地対空ミサイル・パトリオットをウクライナに提供しています。そのため米軍のパトリオットが不足し、日本に提供を求めていたとされます。今回、岸田政権がパトリオットの米国への輸出を決めた発表文書には「米軍の在庫を補完する」と明記しています。ウクライナへの間接的な軍事支援に他なりません。

 5類型に関わる武器輸出については、これまで非殺傷武器に限るとされていました。しかし、今後は、5類型の「本来業務の実施」や「自己防護」のためとして、機関砲を搭載した掃海艦や輸送艦などの輸出を可能としました。

 「被侵略国」への輸出はこれまでウクライナだけだった限定を取り除きますが、「国際法に違反する侵略を受けている」かどうかの判断は政府任せです。

「平和国家」の理念覆す

 国際共同開発品の第三国への部品の輸出は、日英伊で共同開発する次期戦闘機を想定しています。英国やイタリアが次期戦闘機の完成品を輸出した第三国に対し、日本がその部品を輸出できるようにします。自民党は年明けの与党協議でさらに完成品の輸出も可能にしようとしています。

 岸田政権は「平和国家としての歩みを堅持する」と繰り返しています。しかし、今回の決定は憲法に基づき国際紛争を助長しないとした「平和国家」の理念を投げ捨てるものです。日本の国のあり方を覆そうとする自民党政治を終わりにする必要があります。


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