2023年12月24日(日)
きょうの潮流
そこは戦場でした。兵士同士がぶつかりあう最前線。食べ物も少なく、電気もない。寒さ厳しい冬のある夜、戦闘に疲れ果て休んでいると相手の塹壕(ざんごう)から歌声が聞こえてきました▼それは「きよしこの夜」。いつしか、両軍の塹壕から合唱のようにクリスマスの歌が暗い夜空に流れていきました。翌朝、両兵士がゆっくりと歩み寄り、握手を交わします。「メリークリスマス」▼また一緒に歌ったり食べ物を分けあったり。家族の写真を見せあい、記念写真をとる人も。そして、笑顔のサッカーが始まりました―。1世紀前の第1次世界大戦で争ったイギリス軍とドイツ軍の間であったクリスマス休戦です▼この話は兵士たちの写真や手紙などで裏付けられ、語り継がれてきました。日本でも昨年、絵本作家の鈴木まもるさんが紹介しています。『戦争をやめた人たち』と題して。残念ながら戦争は今も世界で起こっているが、戦争をやめることができるのも人だと▼クリスマスを前に鳴り響く爆音や銃声。ガザでは死者が2万人をこえ、住民は深刻な医療危機や飢餓に直面しています。鈴木さんがこの絵本のあとがきの絵を描いているとき、ロシアのウクライナ侵攻が始まりました▼また戦争を始める人間がいる現実にがく然としながら、戦争することよりも強い、人の優しさと想像力が描きたくて完成させました。最後の絵には世界中の人びとが手をつないでつくった輪の真ん中にメッセージが込められています。「この星に、戦争はいりません」








