2023年12月21日(木)
主張
万博費用「全体像」
膨張に歯止めかかる保証ない
政府が19日、2025年大阪・関西万博の費用の「全体像」を公表しました。万博に「直接資する事業」の国費負担は1647億円と算定しました。他に会場周辺のインフラ整備費に国費負担を含め8390億円かかると試算しています。万博を巡っては、会場建設費の膨張などに国民の批判が相次ぎ、開催の見直し・中止を求める声も上がっています。今回の公表は、岸田文雄首相の「全体像を透明性を持って示す」との国会答弁を受けたものですが、不明な点は多くあります。支出増に歯止めがかかる保証もなく、さらなる国民負担増の疑念は消えません。
インフラはカジノと一体
大阪・関西万博の費用は上振れを繰り返してきました。2018年に1250億円だった会場建設費は1・9倍の2350億円に膨れ上がりました。国と大阪府・市、民間が3分の1ずつ負担するため、会場建設費は国が783億円を支出することになります。これとは別に「日本館」整備費など837億円も国負担であることが11月に判明しました。
公表された「直接資する事業」の国費負担1647億円は会場建設費や「日本館」建設費などを含んだものです。開催に向けた「機運醸成費」38億円は今後の費用の追加を見込んでおり、国費の支出はさらに増えるのは必至です。
「会場周辺のインフラ整備」「アクセスの向上」などのインフラ整備費は8390億円です。会場となる夢洲(ゆめしま)への地下鉄・大阪メトロ中央線の延伸費用、夢洲と市街地をつなぐ高速道路の整備費などが含まれています。これらの事業費も当初計画から大幅に増額された経過があります。
費用がかさんでいるのは、軟弱地盤や土壌汚染など多くの問題を抱える夢洲を万博会場に決めたからです。夢洲には万博後にカジノを中核とした統合型リゾート(IR)が整備される計画です。カジノのためのインフラ・アクセス整備を、万博の名で巨費を投じて進めていることは明白です。
「全体像」ではインフラ整備費総額は、会場周辺インフラなどの費用も含めて約9兆7000億円に上るとしました。うち約5兆9280億円は「広域的な交通インフラの整備」として、中国地方や四国の自動車道の整備なども列挙されています。
政府は「万博の有無にかかわらず実施する事業」などと説明しますが、大阪・関西万博との関連性は乏しく、万博費用の実態をますます不透明にしています。万博に便乗した大型開発の横行につながる危険もあります。政府は有識者会議を設置して費用の適否を確認するとしていますが、監視機能が働くかは不確かです。
一刻も早く中止の決断を
メディアの世論調査でも万博の計画通りの開催を求める声は16・5%(「産経」12日付)と2割にも達しません。規模縮小・費用削減・延期・中止が多数です。岸田政権と大阪府・市や日本維新の会は万博に固執する姿勢を改め、中止の決断をすべきです。
来年4月までに万博中止を決めれば、日本政府が博覧会国際事務局に払う補償金は350億円です。それ以降だと830億円に増加します。万博経費の膨張が予測される中で、一刻も早く中止を決定することが重要になっています。








