2023年12月19日(火)
主張
COPと岸田政権
石炭火力への固執 通用しない
13日に閉幕した国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)は、COPの合意文書に初めて「化石燃料からの離脱」を盛り込みました。会議を覆ったのは、地球が温暖化どころか「沸騰化」の時代に突入したという切迫した危機感でした。対策強化に一刻の猶予もならないことが語られました。石炭火力発電に固執する岸田文雄政権の姿勢は世界に通用しません。
脱炭素の足引っ張る日本
合意文書には、温室効果ガスの排出を2019年比で30年までに43%、35年までに60%削減することが明記されました。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、世界の平均気温上昇を1・5度以内に抑えるために不可欠とした目標です。
「公正で秩序ある平等なやり方」で化石燃料から離脱し、50年までに実質排出ゼロを達成するため、30年までに行動を加速させることも確認しました。再生可能エネルギーの設備容量は世界で3倍に増やします。
排出削減対策がとられていない石炭火力発電を段階的に削減することや、非効率的な化石燃料補助金をできる限り早くなくすことにも合意しました。
その一方、化石燃料の「段階的廃止」や、石炭火力の全面廃止に合意できなかったことには、島しょ国やNGOから失望の声が上がりました。脱炭素の足を引っ張った国の一つが日本です。
岸田首相は首脳会合の演説で、石炭火力の存続を主張し、環境NGOからまたも「化石賞」を受賞しました。日本は主要7カ国(G7)の中で唯一、石炭火力からの撤退期限を示していません。
日本政府は、アンモニアとの混焼技術を開発して二酸化炭素(CO2)を減らすとしています。アジア諸国にも「排出削減対策済み」の石炭火力を輸出する方針です。実用化の見通しが立っていない技術を前提に、石炭火力の延命を主導することは、遠い将来への廃止の先送りです。
IPCC第6次報告書が「対策済み」の基準としているのは90%以上のCO2削減です。日本がエネルギー基本計画で目標としているのは30年時点で20%のアンモニア混焼にすぎず、9割のCO2削減には、まったく及びません。「グリーンウォッシュ」(見せかけの環境対策)と批判されて当然です。
いま求められているのは30年までの大幅削減です。石炭火力の新規建設・計画、輸出を中止し、30年に石炭火力の発電量をゼロにすることは日本が果たすべき国際的責務です。
目標引き上げ対策強化を
日本政府が掲げている温室効果ガスの削減目標は、世界平均よりも低い、消極的な目標です。欧米諸国と比べても大きく見劣りしています。CO2排出5位の国として、日本には責任を果たす義務があります。
30年までに残された時間はわずかです。COP28の合意に基づいて目標を大幅に引き上げ、達成に向けて取り組みを加速させる必要があります。
省エネルギー・再生可能エネルギーは未来に向けた投資です。新たな雇用を創出し、地域に根差した持続可能な経済を発展させる上でも、豊かな可能性に満ちた、この道を進むべきです。








