2023年12月19日(火)
きょうの潮流
「清水の舞台から飛び降りるような気持ちで」。思い切った決断をするような時に使われる言葉です。江戸時代には願かけで実際に飛び降りた人がいたという記録が残っています▼その清水の舞台が2025年大阪・関西万博でにわかに話題になっています。万博のシンボルだという大屋根。工事現場に行くと「世界最大級の木製リングをつくっています」という宣伝文句が目につきます。清水の舞台のように釘(くぎ)を使わない伝統工法だというのが売り物です▼大屋根は高さ12メートルから20メートルで1周約2キロ。リングの屋上からは会場全体を見渡せ、瀬戸内海の豊かな自然を楽しむことができ、風雨や日差しよけにもなるといいます。ただ金額を聞いて驚きます。約344億円▼万博の会期半年が過ぎれば解体。補強のため一部金具を活用する工法を「伝統工法」というのか。「世界一高い日傘。壮大な無駄遣いじゃないか」。批判が起きるのは当然です▼万博にいったいいくらかかるのか。会場建設費は大屋根など2350億円。国、大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担します。国費はほかにも日本館建設、警備費など837億円。これで済みません。政府のまとめによると万博関連インフラ整備費は9・7兆円。うち万博に直接関係する整備費は8390億円▼庶民が物価高騰に苦しむなか信じられない金額です。しかも、万博を名目にしたインフラ整備はカジノ誘致のため。「清水の舞台」を引き合いに出すなら万博中止という決断をする勇気こそ。








