2023年12月15日(金)
COP28inドバイ
1.5度目標 生き残る限界値
島しょ国・フィジー出身 ドルー・スラッターさん(30)
実効性ある国際支援を
【ドバイ=小梶花恵】気候変動で最大の被害を受ける太平洋地域から国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)に参加した島しょ国・フィジー出身のドルー・スラッターさん(30)に聞きました。状況は年々悪化しており、地域共同体への国際支援を実効性あるものにする必要性があると強調しました。
![]() (小梶花恵撮影) |
太平洋地域では平均気温が上がるごとにサイクロン(熱帯低気圧)が激しくなり、最強の第5カテゴリーのサイクロンは90年代以降急増しています。
マーシャル諸島やツバル諸島は海面上昇でより危機に面しています。高潮による氾濫は海岸から20メートルの範囲だったのが今は500メートルに広がりました。土壌が海水に浸され作物は育たず、食料価格が高騰しています。
移住を強いられている沿岸部のコミュニティーは最も影響を受けていると言えます。生業(なりわい)の漁業は海洋温度の上昇で海洋生態系がバランスを失って、食料と生計手段を奪われています。
被害と負担多大
私たちのフィジーでは重要産業の観光業が特に影響を受けています。災害が起これば誰も旅行に来ません。さまざまな分野の影響が関連し、どれも深刻です。フィジーではコミュニティー同士が支えあう文化がありますが、今は支える側も困難な状況です。
物理的な災害や経済的損失、文化的被害もあります。私たちの文化やアイデンティティーは土地と強くつながっているので、土地が破壊されると、言語、遺跡、宗教が破壊されてしまいます。太平洋地域は地球温暖化に0・04%しか関与していませんが、被害と負担は多大です。
気候資金の現実
途上国にとって気候資金は重要です。「損失と被害」基金で経済基盤を化石燃料から再生可能エネルギーに変えられることを期待しています。
COP28で資金に関するさまざまな公約が発表されましたが、現在の気候資金は役に立っていません。返済利息の高いローン形態で、公的な補助金ではないからです。脆弱(ぜいじゃく)な国が気候資金を調達しようとすれば、負債を抱えることになります。もう一つの理由は、銀行口座や身分証明書を持っていないと申し込みすらできないことです。現在の資金は脆弱な人々の手に届かないものになっています。
対策として、NGOが申請などの手続きを代理で行っている事例があります。コミュニティーは写真を送り、ごく簡単な申請手続きをするだけにします。資金を受け取ったコミュニティーは太陽光発電機を買って電力を入手し、防潮壁を設置し、塩害で育たなくなった作物の代わりに新たな品種を導入することができます。
COP28では立派な部屋で会議を開き、何十億ドルの資金の公約を議論していますが、太平洋諸国の人々にとって、それは手に取れるものでなければ意味がありません。
資金も重要ですが、私たちがここに来た理由は化石燃料を止めるためです。混焼やCCS(CO2の回収・貯留)などの条件付きではなく、すべての化石燃料の段階的廃止を求めます。パリ協定の1・5度目標は単なる数字ではなく、私たちが生き残るための限界値なのです。









