2023年12月15日(金)
半導体・自動車を優遇
所得減税1回きり 与党が税制大綱
自民・公明両党は14日、2024年度「税制改正大綱」を決定しました。大綱では11月の緊急経済対策に盛り込まれた所得税・住民税の定額減税について来年6月以降に実施することを明記。また5年で43兆円もの軍拡の財源として検討されていた、復興特別所得税の流用など軍拡増税について、実施の時期を明記せず、事実上26年度以降に先送りしました。定額減税は原則1回だけとしており、その後に軍拡増税が予定されていることになります。
大綱では国内投資を促進するとの口実で、半導体や電気自動車など「戦略物資」の国内での生産・販売量に応じて10年間、企業が納める法人税を減税します。控除額は電気自動車であれば1台あたり40万円など製品ごとに定めます。
「イノベーションボックス税制」を創設します。これは企業が国内で研究・開発して24年4月以降に取得した知的財産からの所得の30%を7年間、課税所得から控除するもの。対象は特許権とAI(人工知能)関連プログラムの著作権の使用料所得や売却所得です。実質的には特定産業・大企業への優遇税制です。
スタートアップ(新規事業)の人材確保などの口実で、ストックオプション(株式購入権)の税優遇を拡大します。税優遇を受けられる権利行使価格の上限を現在の1200万円から3600万円へと引き上げます。数千万円規模の減税になることもあります。高額のストックオプションを受けられるのは大企業幹部がほとんどであり、富裕層の優遇です。
中小企業向け賃上げ税制を拡充します。賃上げをしたものの利益が少なく、控除限度額に届かなかった企業に対して、最大5年間は減税を繰り越せる措置を設けます。ただ、減税を繰り越せるとしても法人税減税では賃上げ効果に限界があります。社会保険料の減免や賃上げを対象とした直接補助のほうが実効性は高くなります。
児童手当の高校卒業までの延長および所得制限の撤廃に伴い、高校生などを扶養する親の所得税・住民税の控除額を引き下げる方向です。25年度税制改正で「結論を得る」としています。
解説
カネでゆがむ税制
「政治とカネ」の問題がパーティー券問題で再び噴き出す中、自民・公明両党は特定産業・大企業に大盤振る舞いする2024年度「与党税制改正大綱」を決定しました。「巨額マネー」によってゆがめられる自公政治の姿勢が端的にあらわれています。
決定された大綱は国民が強く要求している消費税減税を拒否しました。定額減税が盛り込まれたものの、実施は来年6月以降です。円安や原材料高騰で生活必需品を中心とする物価高に苦しむいまの生活を支えるものではありません。しかも今回の大綱では実施時期を明記しなかったとはいえ、軍拡増税は既定路線です。国民負担増は明白です。
一方で国内投資や研究開発の促進を口実に、特定産業・大企業を優遇する減税策を創設します。半導体など「戦略物資」に対しては、生産・販売量に応じた減税を10年続けるといいます。国内で研究開発された知的財産からの所得にも7年間の減税措置を盛り込みました。
政治は国民生活を支えることが第一義的な課題です。国民の声の届く政治へ、企業・団体献金の禁止が急務です。
(清水渡)








